PICK UPピックアップ
未来のバーのスタンダードに!
世界初、炭酸氷登場。
<前編>
#Pick up
炭酸氷 by「KIYORAきくち」
見た目は何の変哲もないクラッシュアイス。溶けはじめるとグラスからパチパチとはぜる音がする。 Photos by KENICHI KATSUKAWA
「炭酸氷」をご存知だろうか。
文字通り、炭酸ガスをそのまま氷に閉じ込めた、世界でただ一つのユニークな商品だ。
製品はクラッシュアイス状になっており、硬めのその氷を口に含めば、微細な泡が冷たい刺激となって口の中ではじけだす。
その昔、口の中でパチパチとはぜるザラメ状のキャンディーがあったが、刺激としてはまさにあれ。
この炭酸氷が新感覚のカクテルに応用できるとして、にわかに注目を集めているのだ。
開発したのは、熊本を拠点に水素水の製造・販売を手がけているKIYORAきくち。
熊本県はおいしい水の産地として知られており、環境省が定めた「昭和の名水百選」、「平成の名水百選」に計8か所が選定されているほど。
阿蘇山や久住連山に降った雨が、何十年、何百年という時を経て伏流水として湧き出ているという。
この、熊本ならではのまろやかな水を原水に、水素水製造で培った独自製法で炭酸ガスを含ませた氷が炭酸氷なのだ。
多くのバーテンダーたちの協力を得て、カクテルへのアレンジの研究が進められている。
KIYORAきくちでは当初、水素水に関連して水素氷を商品化しようと思っていたそうだが、その開発中に炭酸氷を思いつき、試しに作ってみたのが始まり。
水に水素ガスを溶け込ませ、安定化させるノウハウを持つ企業である。
気液混合はお手の物だ。
それなのに、どうやっても炭酸氷はできなかった。
トライ&エラーを重ねる中で、特殊な装置自体を製作しなくては炭酸氷を作れないこともわかってくる。
さらに、炭酸入りの氷は世界のどこにも存在しないことが判明した。
「世界の誰も、商品化に成功していない」、そんな炭酸氷の可能性に魅了されたのが、当時大学生だったKIYORAきくちで開発を担当する竹野光紀さん。
親戚が起業したメーカーが炭酸氷を開発しようとしていると聞き及び、なんとかこれを実現させたいと大学を辞めてこのプロジェクトに挑むことに。
「世界のどこにもないという事実が闘志に火をつけた」と言う開発担当の竹野さん。
納屋サイズの冷凍庫で開発を始めること3年、「僕の青春時代はほぼ冷凍庫の中で終わりました(笑)」と竹野さん。
朝から晩まで、上下とも防寒服をばっちり着込んでマイナス20度の世界で過ごした。
水素ガスを水に閉じ込めるノウハウを応用して炭酸ガスを水に溶け込ませ、さらに冷凍温度や時間、冷却媒体を変えて逐一データに取り、ベストなバランスを探りだす。
青春を捧げた甲斐あって、一昨年、ついに商品化に成功!
炭酸氷にレモンやベリーなどの風味をつけた氷菓、「炭酸氷シュワポップ」の販売をスタートした。
「同時にお酒とのマッチングも試してみようと思い立ち、プレーンな炭酸氷を熊本のバーテンダーに試してもらうことになりました。
若いバーテンダーの皆さんが『面白い!』って興味を持ってくださって、予想以上に好感触だったんです。
さらには2016年の秋に博多で開催された『テキーラフェスタ』に、炭酸氷を使ったオリジナルカクテルで参加してくれたんです」
2016年9月に博多で開催された「テキーラフェスタ」。炭酸氷を使ったオリジナルカクテルを振る舞う、熊本「BAR BLUE」の豊川さん。
このイベントをきっかけに、味のない炭酸氷にはバーのツールとしての可能性が広がっているんだと、メーカー側も認識を新たにした。
竹野さん自身、炭酸氷がバーテンダーのクリエイティヴィティを刺戟するという事実に大いに感銘を受けたという。
実際、バーテンダーの視点が加わったことで製品の完成度も高まった。
そして熊本のバーテンダーから東京のバーテンダーへと炭酸氷の噂が伝わり、徐々にバー業界の注目を集めることに。
先物好きのバーテンダーたちが、一気に風向きを変えたのだ。
販売から1年半が過ぎ、現在は熊本で16店舗、東京では10店舗のバーが炭酸氷を取り扱っている。
その中でも「炭酸氷のアンバサダー」として旗振り役を務めるのが、代官山のバーで活躍する深水稔大さんだ。
後編では、深水さんにバーテンダーの視点から炭酸氷の可能性を語っていただこう。
後編に続く。
SHOP INFORMATION
KIYORAきくち | |
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熊本県菊池市 今129-2 TEL: 0968-36-9333 URL:http://www.kiyora-kikuchi.co.jp/shuwapop/ |