テキーラ×ビジネスの
オイシイ関係を考える。<前編>

PICK UPピックアップ

テキーラ×ビジネスの
オイシイ関係を考える。<前編>

#Pick up

池田浩之さん、友田時雄さん、坂本太郎さん by「SHoT3(ショットスリー)」

「日本一のプレミアム・テキーラを!」とアツい想いを抱き、輸入販売会社をたちあげたSHoT3の4人。現役大学院生にして起業家、2つの顔を持つ彼らがプレミアム・テキーラをビジネス商材に選んだわけとは?

文:Ryoko Kuraishi

KBS内で行われていた試飲会兼会議の様子。右列手前から坂本さん、今回は欠席の木村さん、友田さん。左列手前が池田さん。「試飲のはずがついつい飲み過ぎてしまい、最後は会議にならなくなるのが常でした」

現役大学院生が、テキーラ・ビジネスに参入!?

今年10月にローンチしたプレミアム・テキーラ「カーサ デ ルナ」はご存知だろうか。


300軒以上のアガベ農家が共同で所有するファナカトラン蒸留所が、伝統的な製法に則って生産しているプレミアム・テキーラである。
ブランコ、レポサド、アネホとあるが、中でもレポサドはアメリカ合衆国で最も大規模に開催されているテイスティングコンペ「Tequila.net」にて年間最優秀テキーラの一つにも選ばれたほどの逸品だ。


さて、この「カーサ デ ルナ」を取り扱うのは、今年2月に設立されたばかりのプレミアム・テキーラ輸入販売会社、SHoT3(ショットスリー)株式会社である。


設立メンバーは、慶応義塾大学大学院経営管理研究科(慶応ビジネススクール。以下、KBS)に通う現役の大学院生(!)4名。
KBSで出会った、前職のキャリアも年代も異なる4人がいかにしてプレミアム・テキーラに辿りついたのか。


今回はSHoT3メンバーのミーティングに同席、プレミアム・テキーラの可能性やマーケットをビジネス的見地から語ってもらった。

3月のフーデックスではテキーラ・ブースをしらみつぶしに回った。

DRINK PLANET(以下、どりぷら)
SHoT3の池田浩之さん、友田時雄さん、坂本太郎さん(もう1名、木村翔さんは留学中につき欠席)、それぞれバックグラウンドも年齢の異なるみなさんが出会ったのはKBSだとか。


池田浩之さん(以下、池田)
私たち全員、去年の4月に入学した同級生です。
私はもともと証券会社で働いておりまして、金融関係で起業したいと考えていたのでKBSに入学しました。
まさかテキーラの輸入販売を手がけることになるとは、入学時には夢にも思わず(笑)。


友田時雄さん(以下、友田)
私は広告代理店出身です。


仕事とは別に、バックパックを背負っていろいろな国を巡ることが好きだったんですが、旅をするなかで貧困や児童の労働問題に興味を持つようになりまして。
そういう想いが大きくなってキャリアチェンジを志し、世界の労働環境や貧困問題を学んでみたくなりKBSに入りました。


もともとテキーラは好きで飲んでいたんですが、昨年8月に私がテキーラ・ソムリエの資格を取得したことがきっかけで、テキーラ・ビジネスで起業することになりました。
飲む時のネタになれば、くらいの気持ちで資格を取ったんですが….。


坂本太郎さん(以下、坂本)
私は人材派遣の会社で新卒や第二新卒の就業支援として営業やカウンセリングフォローを行っていたのですが、それらをもっと体系的に学びたくてKBSへ。


私にとってテキーラのビジネスは大きなチャレンジで、入学して周囲の人間に刺激を受け、従来と異なることに挑戦してみたいとSHoT3に参加しました。
とはいえ、友田がテキーラ・ソムリエになって、KBSの同級生が次々とテキーラにはまりまして。
自分もいつの間にかテキーラを愛飲するようになっていました(笑)。

フーデックスで出会った、「カーサ デ ルナ」販売会社社長のブルーノ。「カーサ デ ルナ」は「月の家」という意味だが、アステカ人が使っていた古代ナワトル語が由来になっている。

日米のテキーラ観のギャップが起業を促した。

池田
テキーラ・ビジネスの話も、授業の合間の雑談から持ち上がったことなんです。


友田がテキーラ・ソムリエを取得したことからテキーラの話になって、起業するとしてテキーラ・ビジネスはあり得るのか?と思い立ち、みんなで市場やその規模を調べてみたんです。
ところが情報が非常に少ない。
たとえば楽天を見てみても30位くらいまでの銘柄しか表示されないんですよね。(※通常は上位50位までが表示されるようになっている)


こんなに数が少ないのか、ということはインポーターも少ないに違いない。
よし、テキーラ・ビジネスの可能性について(テキーラ協会会長の)林(生馬)さんに聞いてみよう!ということで、友田にすぐにアポをとってもらいました。
それが今年の1月のことです。


友田
ご存知のように、テキーラには1000を超える銘柄があるのに、日本に輸入されているのは60種くらい。
林会長にお会いして、日本に入ってきていない銘柄を試飲させていただいたんですが、私以外はプレミアム・テキーラを飲んだことがなかったものですから、「おいしい!」「これは可能性がある!」と大騒ぎになりまして…。


池田
で、すぐに友田の後を追って、みんなでテキーラ・ソムリエをとりました。


友田
テキーラの勉強をするようになって知ったのですが、日米のテキーラ観にはギャップがあります。


日本では罰ゲームで一気飲みする安い酒。
アメリカではセレブが香りを堪能するスピリッツ。


そのギャップが非常に印象的で、それこそが起業しようと思った根本の理由ですね。
日本でもアメリカと同じようなブームが起こる可能性がある、その伸びしろを感じました。

「カーサ デ ルナ」を産するファナカトラン蒸留所。共同所有者の中には全国アガベ生産者評議会の議長(何を隠そう、ブルーノの父親)がおり、優先的に上質なアガベが調達可能。そのアガベは地域環境に適した厳しい基準を設けて大切に育てられている。

どりぷら
とはいえ、日本のアルコール市場は年々縮小していますよね。
かなりの冒険だったのではないですか?


池田
確かに市場はそうかもしれませんが、酒の歴史を学ぶにつれ、酒というものは定期的なブームを繰り返すものだとわかりました。


日本でも焼酎、ワイン、ハイボール、モヒートなどしょっちゅうブームが起こりますよね。
ブームさえ訪れればこっちのものなんですが、そもそもそうしたブーム作りがアイデアと努力によるものかな、と。
あのハイボールですら、そうですよね。


ブームにはたいていきっかけがあるものですが、「飲む人を楽しくしてくれる」というテキーラの利点を地道な営業でアピールしていけば、テキーラ市場が活発になる可能性はあるんじゃないかと考えています。


どりぷら
たとえブームが起こったとしても、そのあとの生き残りのほうが大変そうですね。


坂本
私たちも最近までプレミアム・テキーラのおいしさを知らなかったわけですが、一度知ってもらえれば愛好家は必ず増えるとにらんでいます。


生き残る術は、結局は味そして質だと思いますから、ブームが来ていろいろな方に味わってもらえるようになれば、ブームが過ぎ去ったあとも一部の愛好家は必ずついてきてくれるんじゃないでしょうか。

取締役会という名の試飲会。フーデックスから持ち帰った候補の銘柄を、全員でブラインドテイスティング。このテイスティングの結果、最終的に「カーサ デ ルナ」に決定した。

どりぷら
現役大学院生のみなさんは、そもそもどうやって「カーサ デ ルナ」と巡りあったんですか?


池田
授業の合間の雑談の流れで今年2月末に法人を立ち上げて、テキーラ協会に紹介していただいて3月のフーデックスに参加しました。


テキーラのブースを回って、とにかくボトルを持ち帰ってみんなでブラインドテイスティングを行いました。
最終的な候補としてリストアップしたのが、日本未上陸で先方も日本に輸入したいという意思を持つ5銘柄。
その中から味わいや香りという品質面、それから現地とのやりとりのスムーズさという理由で選抜したのがこの「カーサ デ ルナ」でした。


「カーサ デ ルナ」の現地販売会社社長、ブルーノが「日本でテキーラを広めたい!」という情熱を持っていて、その情熱をサポートしたいという気持ちもありました。



どりぷら
こうして遂に巡り合った「カーサ デ ルナ」。
後編では、ビジネスを体系的に学んだ3人がこのテキーラをどう広めていくのか。
そしてテキーラ・ビジネスにどんな新しいアイデアをもたらすのか。
ビジネスマンとしての観点から語っていただきましょう。


後編に続く。

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