世界各国の情報を瞬時に得ることができ、人の移動も簡単にできる世の中。加えて各メーカーが主催するバーテンダーの競技大会が増えていることから、世界各地でバーテンダー同士が集まる機会も、以前に比べると圧倒的に増えています。どこのバーに行くべきか、どういったカクテルを、どのバーテンダーが作ったかという話題はSNSを通じて伝わり、バーテンダー同士の交流の場で確認でき、実際に足を運び、さらに世界に向けて発信することで、情報の伝わり方が加速しています。
2010年.海外で生まれた新感覚のカクテル、驚くほど活気にあふれているバーを日本に紹介するためにDrink Planetをオープンしました。それから今日まで、日本人のバーテンダーのクリエイティビティと研究熱心さには驚かされっぱなしです。その半端ない探究心がどこから来るのかを知りたくてサイトを続けてきたといっても過言ではありません。
海外で評価されている日本のバーテンダーのすばらしいところは、「技術」や「正確さ」、「清潔感と美しさ」と言われています。けれども私はそれ以上に、バーテンダーたちが皆、研究熱心で、独自の視点を持ち、「楽しそうに仕事している」ところにあるのではないかと思っています。
サイトオープンしてから今日までバーを取り巻く状況は大きく変わり、多様な方向に進化しつつあります。
お酒もよりヘルシーで低アルコール、ナチュラルなものが好まれ、さらに、ノンアルコールのカクテルにも注目が集まっています。その一方、薬酒やクラシックカクテルなど歴史がありストーリーのあるものに改めて光があたっています。
世界各国の食文化を日本で楽しめる今、バーに行く人の目的はさまざまで、もっと気軽に行きたいと思っている人も大勢いるはずです。そういった人びとに気後れすることなく足を運び、新たな発見をして、楽しんでもらうためにも、日本のバーに多様性があることはとても重要だと思います。
バーテンダーのみならず、広く料飲業界の皆さんに、また、これまでバーに馴染みがなかったという方がたにも、バーの扉を開けていただき、その“進化”の過程をぜひ体感してほしいと願っています。
辻美奈子
「進化するバーBy Drink Planet」(柴田書店)より