
SPECIAL FEATURE特別取材
WWAの「ワールドベスト」を受賞した
デンマーク「STAUNING WHISKY」日本初上陸!
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文:Sayuri Tsuji 写真:Shiho Akiyama
北欧・デンマーク初のウイスキーで、世界的な賞を受賞。今年の「ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)2025」でも「ワールドベスト」を受賞した「STAUNING WHISKY(スタウニング・ウイスキー)」が3月に日本初上陸。来日したCEO、Lasse Vesterby(ラッセ・ヴェステルビー)さんと、デンマーク王国大使館のMarie Louise Flach de Neergaard(マリエ・ルイセ・フラック・デ・ネルゴー)さんにデンマークウイスキーの魅力を伺ってみた。
右:STAUNING CEO、Lasse Vesterby(ラッセ・ヴェステルビー)さん。左:デンマーク王国大使館のMarie Louise Flach de Neergaard(マリエ・ルイセ・フラック・デ・ネルゴー)さん。
2005年に誕生したデンマーク初のウイスキー
デンマークと聞いて、何を思い浮かべるだろうか。
海に囲まれた北欧デザインの国、作家アンデルセンが生まれた国、ミシュラン3つ星レストラン「noma(ノーマ)」がある国、最近ではトランプ大統領の発言によって、グリーンランドがデンマーク領と知って驚いた人も多いのではないだろうか。
「STAUNING WHISKY」は、そんなデンマークの西海岸、人口約300人という小さな町「STAUNING(スタウニング)」で2005年に生まれたデンマーク初のウイスキーだ。
デンマーク西海岸の小さな町、STAUNINGにある蒸留所と穀物畑。
その誕生のいきさつがちょっと変わっている。
「ある日、医者をしている私の兄弟がラジオで『ウイスキー造りは簡単。でも、良いウイスキーを造るのは難しい』と言っているのを聞いて、だったらやってみようよ、と。
農業国でもあるデンマークでは大量の大麦をウイスキー大国であるスコットランドに売っています。だけど地図を見てみると、デンマークとスコットランドは同じくらいの緯度で気候も似ている。だったらデンマークでも世界レベルのウイスキーを造れるんじゃないか思ったんです。
そこで周囲の友人たちに声をかけたところ、賛同してくれた9人で、最初は週末の趣味として造り始めました」
な、なんだか思ったより軽いノリ(失礼!)で始まったのですね……。
ラッセさん(右端)と8人の仲間たち。
しかも仲間の9人は医者、肉屋、教師、ヘリコプターパイロット、エンジニアと経歴もばらばらで、蒸留経験はまったくなかったのだそうだ。
「翌年初めてできあがったウイスキーをみんなで飲んでみたら、オイリーで甘さもあっておいしかった。これはいけるんじゃないかということになり、農家を買い取って2009年から本格的な蒸留が始まりました。
最初はピートの香りが効いたアイラのようなウイスキー造りを考えていたのですが、2000年以上の歴史を持ち、デンマーク人の食卓には欠かせないライ麦をベースにしようということで、次第にライウイスキーにフォーカスしていきました」
三ツ星レストラン「noma」にリスティング
気負うことなく始まったウイスキー造りだが、「良いものを造りたい」という9人の熱意は強く、完成に至るまでの工程は、細部までこだわり抜いたものだ。
まず、すべての穀物に、手間がかかるため世界中のウイスキー蒸留所のわずか2%のみしか行っていないフロアモルティング製法を採用。扱いがむずかしいといわれるライ麦をあえて大麦と同じくフロアモルティングすることで味に深みを与えている。
使用する穀物はすべて100%フロアモルティング。24基の小型ポットスチルによる直火炊きで深みのある味と香りを引き出す。
乾燥やスモークにも、デンマーク産のピートとヘザーを使用。24基の直火式小型銅製ポットスチルで二度にわたって蒸留を施し、さまざまな樽でフィニッシュをかけている。
「大きなターニングポイントとなったのは、2012年に三ツ星レストラン『noma』にリスティングされたこと。2019年にWWAで『ワールドベストニューメイク&ヤングスピリッツ賞』を受賞したことも大きかったですね」
デンマーク大使館で食品を担当するマリエ・ルイセ・フラック・デ・ネルゴーさんも「地産地消を大事にしながらクオリティの高いものに仕上げている。デンマークで昔から大切にされてきたモノづくりを踏襲したブランドだと思います」と絶賛。
STAUNINGの日本初上陸にあたり、3月にレセプションがデンマーク大使公邸で開かれた。大使公邸は日本を代表する建築家、槇文彦氏が設計。デンマークを代表する照明や家具が、空間の雰囲気に溶け込みながらも存在感を際立たせていた。
実際、今年20周年を迎える「STAUNING WHISKY」の評価は年々高まっており、これまでに数多くの国際的な賞を受賞。昨年だけでも、獲得した賞の数は10を超えるという躍進ぶりだ。
今年のWWAでも「ワールドベスト・シングルカスク・シングルライウイスキー」を受賞。STAUNINGの蒸留所は、今や世界中から人々が訪れるデンマークが誇る場所となっている。
ウイスキーの世界に新たな風を吹かせたい
日本に初上陸した「STAUNING WHISKY」のラインナップは、シグネチャーアイテムである【RYE(ライ)】をはじめ4種と、限定生産3種の全7種類。
ライウイスキーといえば、アメリカの力強い味と香りが思い浮かぶが、実際にSTAUNINGのウイスキーを飲んでみると、舌触りはとてもスムースでまろやか。上品で奥行きのある香りもバランスがとれていて、余韻も深い。
近年日本でも親しまれる言葉となったデンマーク語で「居心地がいい空間」や「豊かな時間」を意味する「ヒュッゲ(Hygge)」を演出してくれそうなウイスキーだ。
STAUNING WHISKYに合わせて、ライ麦やサーモンなどデンマークの食材を使ったフィンガーフードがふるまわれた。カナッペに使われたライ麦パンとウイスキーの相性は特にぴったり。
「デンマークではニートやロックで飲む人が多いですが、このウイスキーはハイボールでも楽しんでいただけると思いますし、特にベルモットカスクを使っている『エルクラシコ』は、マンハッタンなどのクラシックカクテルにもぴったりです。個人的にはブールヴァルディエが好きなので、日本のバーテンダーさんたちにぜひ使っていただきたいですね」
STAUNINGの成功を目の当たりにし、現在、デンマークには約25ものウイスキー蒸留所が設立されているそうだ。
「新たな蒸留所設立のサポートができることは自分たちにとってもうれしいこと。共にデンマークウイスキーを盛り上げてウイスキーの世界に新たな風を吹かせ、いずれアメリカ以外のライウイスキーでナンバーワンになりたいと思っています」
STAUNINGの主要アイテム。左からRYE、KAOS、SMOKE、HOST。ボトルに描かれたイラストはデンマークのアーティストによるもので、STAUNINGの物語とその特徴がひと目でわかるよう描き込まれている。
日本初上陸「STAUNING WHISKY」のラインナップ
【RYE(ライ)】
STAUNINGのシグネチャーアイテムで、デンマークを代表する食品であるライ麦を使ったモルトウイスキー
[原料]100%フロアモルティングしたデンマークのライ麦と大麦
[熟成]アメリカンオークの新樽
[味・香り]ライ麦パン、熟したチェリー、柑橘系の香り。バニラとスパイシーな余韻が特徴。ライ麦の風味を活かした滑らかで繊細な味わい
【KAOS(カオス)】
シングルモルト、スモーク・シングルモルト、ライ・ウイスキーのブレンド
[原料]100%フロアモルティングしたデンマークのライ麦、大麦、ヘザースモーク大麦
[熟成]アメリカンオークの新樽、ファーストフィルの酒精強化ワインおよびスピリッツのオーク樽
[味・香り]シトラスフルーツ、ほのかなスモーク、甘いスパイスの香り。フィニッシュはチョコレートやリンゴなどの複雑な余韻
【SMOKE(スモーク)】
デンマークのヘザーとピートでスモークしたシングルモルトウイスキー
[原料]100%フロアモルティングしたデンマークの大麦
[熟成]ファーストフィルの酒精強化ワインおよびスピリッツのオーク樽
[味・香り]柔らかいピート香と蜂蜜の甘さが加わったような香り。新鮮なハーブの香りもして、スモークとのバランスがとれている
【HOST(ハースト)】
シングルモルウイスキーとライモルトウイスキーをブレンドしたエントリーモデル
[原料]100%フロアモルティングしたデンマークのライ麦、大麦
[熟成]フアメリカンオーク樽、ポートウッド
[味・香り]滑らかでスムース、フルーティな風味
【限定生産/EL CLÁSICO(エルクラシコ)】
ライウイスキーがベースで、アメリカンオークの新樽で熟成させた後、スペイン産ベルモット樽で仕上げた。クラシックカクテルマンハッタンへのオマージュとして造られた商品。
【限定生産/RYE SHERRY CASK(ライシェリーカスク)】
世界限定3500本。アメリカンオークの新樽で熟成させたライウイスキーを、スペイン産のシェリー樽で仕上げた。
【限定生産/SMOKE TAWNY PORT CASK(スモークトゥニーポートカスク)】
世界限定5000本。スモーク・シングルモルト・ウイスキーをポート樽のみで熟成させたもの。
公式ウェブサイト
http://stauningwhisky.com
お問い合わせ先
株式会社Sincere
https://kk-sincere.com
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