
DP LABOどりぷラボ
今回のお題「アメリカン・ロック」
〜Jack Daniel’s Inspiration Circuit Vol.2〜
#DPLabo
文:Drink Planet編集部 撮影:秋山枝穂
アメリカのカルチャーやスピリットに造詣が深いバーテンダーが、それぞれの解釈でジャックダニエルの魅力をひもとき、オリジナルカクテルに表現する「Jack Daniel’s Inspiration Circuit」。
ジャックダニエルといえば、1866年の創業以来、変わらないレシピ・製法を守り続けることで知られます。
最大の特徴はといえば、甘い香りとスムースな口当たり、そしてメローな余韻。
これは、熟成前の原酒を巨大な槽に詰めたシュガーメープル(サトウカエデ)の木炭で一滴ずつ丁寧に磨く、「チャコール・メローイング」によってもたらされるものです。
150年以上もの間、伝統的なものづくりを貫く姿勢から、“アメリカのクラフツマンシップの体現”と謳われるジャックダニエル。
ここでは、ジャックダニエルをカクテルに仕立てるまでの、バーテンダーたちのインスピレーションをお届けします。
今回のお題に取り組んでくれた3人のバーテンダー。左から、鉄井さん(「THE MUSIC BAR -CAVE SHIBUYA-」)、向井さん(「JANAI COFFEE」)、若林さん(「Bar若林」)。
今回のお題はずばり、「アメリカン・ロック」!
多くのミュージシャン、特にアメリカン・ロックシーンに輝くアーティストたちに愛されたジャックダニエルのルーツをたどりながら、再解釈していただきます。
まずは、こちらの質問から。
あなたのジャックダニエル観/ジャックダニエル体験を教えてください!
「ロックといえばジャックダニエル!初めて飲んだウイスキー」(鉄井)
「ワイルド!長髪のスケーターがロックを聴きながら飲んでいるイメージ」(向井)
「バーテンダーとして初めて勉強したスピリッツ」(若林)
「ロックといえばジャックダニエル!そういえば、初めて飲んだウイスキーもジャックダニエルでした。うちのバンドのギタリストも、いつもジャックコークを飲んでいます」(鉄井さん)
「僕のなかでは、長く『ジャックダニエル=ワイルド』という印象がありました。スケボー青年がロックを聴きながら飲むイメージ。
でも、いま飲んでみると特有の甘いフレーバーを感じて、ぜんぜん違う印象を抱くんです。不思議なウイスキーですよね」(向井さん)
「バーの世界に足を踏み入れて、初めて勉強したお酒がジャックダニエル。小さなミュージックバーで、たまたま手にとった1本がジャックダニエルでした。
ナンバーセブンにまつわるさまざまなエピソードがあって、おもしろいなと思ったのを覚えています」(若林さん)
鉄井さんのカクテル「NU METAL」
最初に登場していただくのは、ミュージシャンとしての顔も持つ鉄井さん。「chasedown.」というバンドでボーカルを務めています。
幼少期〜中学校を卒業するまでの10年余をアメリカで過ごし、帰国後、すぐにバンドを始めたというから、音楽活動歴はバーテンダー歴よりはるかに長い!
そんな鉄井さんがジャックダニエルと聞いて真っ先に思いつくのは、テキサス州発のヘヴィメタルバンド「Pantera」。
「Pantera」のライブでは、ギタリストのダイムバッグ・ダレルが稲妻ペイントを施したギターを弾きまくるさまがおなじみでしたが、そんな彼が愛したのがジャックダニエル。
ランドールのアンプの上にはいつもジャックダニエルが置いてありました。R.I.P.ダイムバッグ。
そんな「Pantera」を頭に描きつつ考案したカクテルは、ハードロックとヒップホップを融合した音楽ジャンル、ニューメタルがイメージソース。
「ニューメタルは1990年代半ば以降に流行ったジャンル。
ジャックダニエルといえばロックですが、一方でヒップホップ文化に欠かせないのがヘネシーです。
その2つを合わせることで、カクテルにおけるロックとヒップホップの融合を考えてみました」
ベースとなるのは、焦がしたリンゴの木のチップをインフューズドしたジャックダニエルと、そのチップの燻香を閉じ込めたジャックダニエル。
バナナリキュールとメープルシロップで甘みを加え、ジャックダニエルの甘い香りと調和するチョコレートビターズを1ダッシュ。
ガーニッシュは、スピリタスに漬けたブラウンシュガーをキャラメリゼしたもの。砂糖が溶けるにつれてスピリタスの香りが立ち上がり、味わいや香りの変化を楽しめます。
「ジャックダニエルは味わいの主張がはっきりしているので、副材料になにを持ってきても負けません。カクテルに仕立てやすいウイスキーだと思いました。
これはオールドファッションドのツイストですが、複雑すぎないレシピのほうがこのウイスキーのよさを引き立てると思います。
普段、ジャックコークやジャックソーダを飲んでいる方にお勧めしたいカクテルです。うちのギタリストとか(笑)」
向井さんのカクテル「Eight Beat Martini」
「FUGLEN 」の出身ということで、コーヒーカクテルを得意とする向井さん。
考案したのは、エスプレッソマティーニをジャックダニエルでツイストした「Eight Beat Martini」です。
「僕がイメージしたロックは、チャック・ベリーやエルヴィス・プレスリーが活躍した1960年代のロックンロール・シーンです。
そもそものロックミュージックは黒人音楽であるブルースやカントリーミュージックを起源としており、それが白人カルチャーに移行するなかで現在のスタイルが育まれたようで。
さまざまな文化的背景が混ざり合い、境界が曖昧になっている複雑さをカクテルに落とし込んでみました」
ジャックダニエルに加えるのは、カシスの葉とコーヒーの葉から香りを抽出した「エンピリカル シンフォニー」。
コーヒーはコスタリカ産ジャガーをアナエロビックファーメンテーション(嫌気性発酵)で精製したもの。このプロセスにより、ジャックダニエルのキャラメルを思わせる甘い余韻を引き立てる、ワインやチョコレートのような複雑なフレーバーが生まれます。
ルバーブリキュール、自家製トマトウォーター、トンカビーンズを漬け込んだリレ ブランでさらに複雑な香りを加えます。
甘みは、生のハチミツでメロンを発酵させた自家製シロップで。ジャックダニエルのボディとコーヒーの渋みを、キャンディを思わせるメロンの香り、ルバーブやトンカビーンズの香りが引き立てます。
仕上げに、アブサンを吹きかけます。
「カルチャーにまつわるさまざまなエピソードのおかげか、ジャックダニエルはほかのウイスキーに比べて親近感を感じる人が多いようです。
親しみやすいイメージの反面、味わいや香りはしっかりしていて、カクテルにしたときにも存在感を主張してきます。
こういうギャップが、ポジティブな体験として飲み手の記憶に残るのではないでしょうか」
若林さんのカクテル「Motorhead」
ジャックダニエルを愛飲するロック・ミュージシャンの1人として知られるのが、「Motorhead」のレミー・キルミスター。
レミーといえばラウドなベースと、ジャックダニエル 7:コーラ 3というとんでもない比率のジャックコークで有名です。
そんなバンドの名を冠したカクテルを制作したのは若林さん。
果たしてどんなカクテルでしょう。
「原付免許をとったばかりのとき、スクーターを運転するときにMDウォークマンで聞いていたのがMotorhead。テンションがあがりましたね。
その時のイメージで考えたカクテルがこちら。
僕の中のロックは、タトゥー、ハーレー、素肌に革ジャンというイメージなので、そうした世界観に合うようなパンチのある構成を考えました」
ジャックダニエルにカンパリを加え、自家製パチョリビターズや15種のスパイスで作ったスパイスビターズでアクセントを。
このスパイスが、ジャックダニエルならではの甘い香りを際立たせます。
若林さんいわく「ゴリゴリのロックに合う、ボディがしっかりしたストロングなカクテル」ですが、オレンジワインで少しだけ飲みやすさも加えています。
「ネオン管のあるパブのようなバーカウンターで、ハーレー乗りの大男が2人、アイスなしのロックグラスで飲んでいる……そんなシーンを想像しました。
ジャックダニエルはニューヨークサワーやオールドファッションドにもハマりそうですし、特有の甘みを生かし、ウイスキー初心者が気軽に飲めそうなカクテルも作れそうです。
ジャスミンの香りや梅酒のフレーバーを加えたショートカクテルに仕立てても」
普段はテキーラやメスカルを扱う若林さん、久々にウイスキーベースのカクテルを作成してみて「ウイスキーの、メキシコにはないフレーバーが新鮮だった」とか。
それぞれのロック観を個性的なカクテルで表現し、ジャックダニエルの、カクテルにおけるポテンシャルを証明してくれた3人。
ジャックダニエルを、クリエイティビティあふれるカクテルに仕立ててみたら……?
次回はジャックダニエル テネシーハニーを使ったカクテルが登場します!
Jack Daniel’s Inspiration CircuitVol.3をお楽しみに。