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札幌に誕生したBar OWL&ROOSTER
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斎藤久嗣さん from「Bar OWL&ROOSTER」
文:Ryoko Kuraishi
店主の斎藤久嗣さん(左)と、シグネチャーの「ソルスティスネグローニ」¥1,400。Bobby`s Ginにスモモのオードヴィー、キナリキュール、オレンジビターズ、シラカバの樹液をあわせたカクテルだ。
上海で再認識した、北海道という土地の強み。
2020年6月、札幌はすすきのに自身のバー、「Bar OWL&ROOSTER」を開いたのは、斎藤久嗣さん。
恵比寿の「Bar Tram」および「TRENCH」を経て上海の「Bar Ars&Delecto」の立ち上げに携わり、2年の滞在の後に帰国したのが2019年12月のことだ。
「中国、とくに上海は酒類メーカーに最も注目されているマーケットの一つであり、最新のトレンドや情報にも敏感で、若いバーテンダーに門戸が開かれているアップカミングな大都市。
そんな上海のバーシーンの人々にとって憧れのディスティネーションが北海道です。その食文化や大自然が大陸の人たちを惹きつけてやまないようです。
そうした話を耳にして北海道のバーシーンには大きなチャンスがあると思うと同時に、北海道のなかでも札幌をもっと認知させたい、札幌のバー文化を世界へ向けて発信していきたい、そう考えるようになりました」
「窓のある空間で、北海道の四季を感じてもらいたい」と斎藤さん。
北海道出身の斎藤さんは札幌のオーセンティックバーでキャリアをスタートしたこともあり、いつかは札幌で開業しようと心に決め、オーストラリア、カナダ、そして東京で経験を積んでいたそう。
「札幌のバーシーンはミクソロジーや新しいテクニックに貪欲というよりも、カクテルの味やクオリティそのものを重視する傾向があります。
東京や上海と違って新鮮な素材に事欠かないという土地柄ゆえなのでしょう。
そういう札幌のバーシーンにグローバルな視点を持ち込んでみたら、ぜったいに面白いケミストリーが生まれるはず。
地方ではとりわけ地域社会とバーが密接な関係にありますから、ここ、札幌で時間をかけてバー文化を作っていくことにやりがいも感じて。
そういうわけで独立開業の準備を始めたのです」
帰国後すぐ、すすきのの北側、オーセンティックバーの立ち並ぶ静かな一角に理想のロケーションを見つけ、4月オープンを目標に準備を進めた。
左:「ヴァンゴッホ」¥1,500。ドライジン、アブサンにアーモンドシロップ、フレッシュレモン、卵白を合わせ、シナモンチンキで香り付けをしている。右:アブサンも種類豊富に取り揃える。
バーにいながら、北海道の四季を感じてもらいたい。
「2、3人でも回せる適度な広さと、窓があることを条件に探しました。
北海道はとりわけ季節の移り変わりが鮮やかで時間帯によって自然光も変化します。
外界とのつながりを大事にしたかったんです。
窓からの景色を楽しんでいただきたいし、景色や光に合わせて音楽もお出しするカクテルも変えていきたい。
そういうところでも札幌らしさを打ち出したいと思って。
内装はフランスのカフェやロンドンのパブなど、これまでに訪れた異国の飲食店のイメージをミックスしたもの。
そこにインダストリアルな資材をいれて、どこか無骨なムードに仕上げました」
斎藤さんが札幌で極めたいと思ったのは、北海道ならではのフレッシュな食材と欧米の高品質なスピリッツを合わせた、地方だからこそ実現できるカクテル。
特に、世界各国で滞在する中で知ることのできた薬草酒やオードヴィーを幅広く揃え、札幌ではメジャーでないカクテルや薬草酒文化に対応できるようにした。
北海道産ハスカップのコーディアルなど、地元素材を使った「北海道ミュール」¥1,300。
北海道の素材で、クラシックカクテルをツイスト。
カクテルにおいては、欧米のクラシックカクテルにも北海道の素材を使うなどしてツイストし、シグネチャーカクテルとしてオンメニュー。
たとえば「ソルスティスネグローニ」はスモモのオードヴィーとキナリキュールをベースに、シラカバの樹液で加水してローアルコール仕立てに。
「北海道ミュ―ル」はラフロイグをベースに北海道産ハスカップとフレッシュライムにミントで爽やかに。
と、ここまでは順調だったが、札幌では4月12日に、17日には北海道全域で外出自粛要請の内容を含む緊急事態宣言が発令されてしまう。
内装工事の遅れもあり、オープンは6月末まで延期に……。
「それでも7月から9月はすすきのにも人出が戻り、他の飲食店とコラボしてカクテルとサンドイッチと音楽のイベントを開催するなどしていたのですが、現在はまた、他店との行き来も難しい状況。
11月から22時までの時間短縮営業を行っています」
札幌では珍しい薬草酒やスピリッツを揃える。
「バーは人生を豊かにしてくれるサードプレイスだから」
いまは我慢の時だが、おなじすすきの地区はもちろん、海外のバーテンダーとも随時、やりとりをしていて、みんなで情報をシェアしながらこの先の展開を考えている、と斎藤さん。
ウィズコロナの時代にバーテンダーは何ができるのか。
サードプレイスが機能しないこのご時世、「バーは生活に必要不可欠ではないけれど、人生を豊かにする存在である」、そんなバーの意義にあらためて思いを馳せ、文化を育む交流の場とづくりを促していきたいと考えている。
「状況が落ち着いたら、海外からバーテンダーを呼んでのゲストシフトやグローバルなゲストの視点、楽しみ方に関連したマスタークラスの開催など、他都市との交流を積極的に進めていきたいと考えています。
東京とはひと味違う札幌のバーの楽しみ方を、そして地方発のバー文化を世界に広く発信していきます」
SHOP INFORMATION
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Bar OWL&ROOSTER | |
北海道札幌市中央区南4条西5丁目10番 第4藤井ビル610 TEL:011-200-0994 URL:https://www.facebook.com/Bar-OwlRooster-100124408425586/ |