バー業界で最注目のツール、登場!
巴波重工発、卓上減圧蒸留器に迫る。
- 前編 -

PICK UPピックアップ

バー業界で最注目のツール、登場!
巴波重工発、卓上減圧蒸留器に迫る。
- 前編 -

#Pick up

安永昌平/Yasunaga Shohei from「巴波重工」

最近、バー界隈でやたら耳にするのが、”バー向け卓上減圧蒸留器”のこと。超ギークで、でも最高におもしろい機械を生み出すエンジニア発のブランド、「巴波(うずま)重工」を訪ねました!

文:Ryoko Kuraishi

こちらが、巴波重工が開発した卓上減圧蒸留器。真空ポンプと蒸留液回収瓶と接続して減圧蒸留が行える。ボイラー容量は1.8リットルで、一度に最大で900mlの減圧蒸留が可能。それでいて金額はロータリーエバポレータ一式の1/4以下に抑えられている。定価¥480,000だが、バー事業者向けには今年発注分限定で特別割引プランあり。詳しくは巴波重工までお問合せを。

2024年春に一般発売をスタートするや、一部のバーの間で熱狂的に受け入れられているのが、巴波(うずま)重工の「卓上減圧蒸留器」。

コンパクト設計が目を引くこの機械、減圧で(つまり、素材の芳香成分を損なう熱を加えず)、簡単・手軽・安全にスモールバッチの蒸留を、バーカウンター上で可能にしたのだ。

減圧状態にするので温度はせいぜい40度程度、素材のみずみずしさをキープしたまま香りの成分を抽出可能。

減圧中にミドルカットも行える(←ここ、超重要!)。

低温での煮詰め(減圧濃縮)も可能なので、シロップと芳香蒸留水、コンポートを同時に作ることができる。

蒸留器内にバスケットを用いて、ヴェイパー・インフュージョンもOK。

おまけに、ガジェットギークたちの心をわし掴みにするビジュアルを備えている。

巴波重工を率いる現職バリバリのエンジニア、安永さん。

バーに求められる機能に特化した、減圧蒸留器。

巴波重工は機械エンジニアの安永昌平さんが手がける機械メーカーで、オーダーメイドによる機械設計のほか、バー向けのオリジナルツールの開発を行っている。

安永さんは工学部で機械科出身。大学院卒業後、大手重工業メーカーに就職。設計部門などを経て、現在は化学・食品向けの機械メーカーにて、新製品の研究開発業務に携わっている。

「生きがいはものづくり」という安永さんが中学、高校、大学、社会人時代を通じて作り続けてきたのが流体機械(空気や水など液体に関する機械)で、そこにもう一つの趣味である酒の要素が加わり、試しに作ってみたのが卓上減圧蒸留器だった。

大手メーカーの「独房のような」独身寮で、ホームセンターで手に入るガラス瓶と3Dプリンタを駆使してプロトタイプ第1号を作った。

夜な夜な、浴室で減圧蒸留器を動かして芳香蒸留水を作り続けたとか。

左:開口部が大きいので素材をそのまま投入できるのもポイント。右:バスケットを装着すればヴェイパー・インフュージョンが可能。

「海外のバーではすでに減圧自家蒸留はスタンダードになっていますが、多くのバーで採用されているロータリーエバポレーターはオーバースペックだと感じていました。

そもそもロータリーエバポレータは、化学の研究室で要求されるような特殊な処理のために設計された実験装置なので、構造が複雑で扱いが難しい。機械も大型で、本体もランニングコストも高価ですし、ポンプの動作音も気になります。

一方、バーで求められるのは、ボタニカルの香りを抽出してドリンクに落とし込むこと。

ロータリーエバポレーターよりもっと簡易的な設計でコンパクトサイズの減圧蒸留器なら、だれでも使えますし、バーでの需要が広がると思いました」

ちょうど試作品が完成したころ、旅先の尾道でたまたま見つけたバー、「ソーコ」に立ち寄った。

ハーブやフルーツ、薬草を使ったユニークなカクテルを提供するこの店で、店主と意気投合。
自作の蒸留器の話をしたら「ぜひ、1台作ってほしい」と、あっという間に受注が決まった。

独身寮で作り上げた試作品第1号がこちら。 DIY感満載!

数週間後、「ソーコ」に納品するために尾道に向かう途中、実家のある九州に立ち寄り、博多のバーを回った。

納品予定の蒸留器を見せたところ、たちまち数軒で受注が決定。そこから口コミで博多のバーに広がっていった。

バーカウンター上で操作できるこの蒸留器があれば、減圧蒸留はバーにおける新しいスタンダードになるかもしれない。そう考え、「バーカウンターで見せる」ことを意識した第2号を開発。

こちらはよりスマートでワクワクするビジュアルにアップデートし、さらにIHコンロ対応に仕様変更した。

「その後、セミナー開催の声がけもいただくようになり、現在は全国のバーに導入いただいています」

開発中の「ロータリーフラクションコレクター」(予価¥250,000)。使い方は後編で!

導入店舗が増えるにつれ、安永さんのもとにはさまざまなフィードバックが寄せられるようになった。いずれも、プロフェッショナルならでは、と納得させられる使い方だ。

「バーにおいてフルーツやハーブの芳香蒸留水を減圧蒸留で作ったり、コーラやトニックのシロップを減圧濃縮で作ることは想定していましたが、最近ではバー以外の用途でも様々に活用いただいています。

京都の和菓子職人は、常圧蒸留では香りが飛んでしまうクチナシを減圧蒸留してシロップと芳香蒸留水を作り、花の繊細な香りを生かした和菓子に仕立て、宮城のパティシエは、ワインやシャンパンの煮切をこの減圧蒸留器で行うことで繊細な香りを残したままノンアル化し、それを使った新たなお菓子を作られています。

ガストロノミー・シーンではお馴染みのガストロバック(減圧加熱調理器)の代用も可能で、出汁やソースを濃縮する料理人もいらっしゃいます」

後編では、春からこの蒸留器を導入している「Cocktail Stand FUREK」へゴー!齋藤隆一さんに、その使い勝手を伺います。


後編に続く。

SHOP INFORMATION

巴波重工
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TEL:非公開
URL:https://www.uzmlab.com/home