PICK UPピックアップ
アンダー30が登場!
不定期連載:どりぷらが今、注目するバーテンダー!Vol.3
#Pick up
Kosaka Shun/小坂駿/SKY LOUNGE AURORA、Ito Koki/伊藤広光/Cocktail Bar Raven
「スカイラウンジ オーロラ」に勤務する小坂駿さん。
現在のバーシーンを牽引するのは30〜40代のバーテンダーですが、次世代の台頭も見逃せません。
今月は未来のバーシーンを担うアンダー30世代から、4人のバーテンダーをピックアップ。
こだわりのカクテル、日ごろから心掛けていること、そして未来のバーシーンに必要なzennことなど、彼らのアイデンティティをご紹介します。
1人目は京王プラザホテル「スカイラウンジ オーロラ」の小坂駿さん。
調理師免許をもち、食材の成分を紐解き、理論だててレシピ構成を考えることが好きという小坂さんのスタイルは?
バーテンダーになった経緯を教えてください。
父が故郷・広島でフランス料理店を営んでおり、幼い頃から料理の世界を身近に感じてきました。
高校卒業後、上京して調理学校に通いながら、アルバイトとして京王プラザホテルのレストランで働いていました。その配属先で、「オーロラ」からヘルプに来ていた先輩バーテンダーに出会ったんです。
そのバーテンダー姿がとにかくかっこよかった。営業後に大会やフレアの練習をしている姿に憧れ、バーテンダーの道に進むことになりました。
専門学校卒業後、アルバイトスタッフとして「オーロラ」に入店。2018年に正社員となり現在に至ります。
小坂さんのシグネチャーカクテル。左は「フェイクワイン」。芋焼酎をベースに、白ワインの成分を紐解いて熟成した白ワインの味わいや香りを再現した。 右は、バラとキュウリのエッセンスが溶けあうプレミアムジンの香りや味わいを引き立てる自家製材料とシャンパンを合わせた華やかなカクテル、「ヘンドリックス 75」。
「バーテンダーとして大きく成長できた2022年」(小坂さん)
2022年は小坂さんにとってどんな1年でしたか?
数多くの先輩バーテンダーたちが積極的にコンペに挑戦し、優勝・入賞していることもあって私も1年目から参加しています。
普段の営業とは別に輝ける場があることが、バーテンダーとしてのモチベーションになっています。
2022年はバーテンダーとして大きく成長できた1年でした。「本格焼酎&泡盛カクテルコンペティション」で優勝し、「ディアジオ ワールドクラス日本大会」ではファイナリストに名を連ね、「カンパリグループ・カクテルグランプリ2022」では表彰台に立つことができました。
コンペでは先輩がたのさまざまなスタイルを参考にしながら、自分に合っているものを取り入れるようにしています。
「ワールドクラス」では歴代の優勝者や部門優勝した方々の話し方や文章の構成、カクテルの構成をリサーチ。「カンパリグループ・カクテルグランプリ」では「ワールドクラス」の敗戦を踏まえ、部門優勝された方々の強みであるホスピタリティやお客さまを引き込む力などを参考に挑みました。
その結果、料理のエッセンスや成分などを理論立ててプレゼンテーションする自分のスタイルが養われたと思っています。
それでもやっぱり印象に残っているのは、助言やサポートしてくださった先輩、後輩、お客さま、仲良くしていただいているバーテンダーのみなさんからの応援や叱咤激励ですね。
上は「スカイラウンジ オーロラ」、下は「Cocktail Bar Raven」。
そんな小坂さんがカクテルで大切にすることはなんですか?
カクテルメイキングで大切にしているのは、「一杯の重み」です。
バーで過ごすこのひとときをお客さまに楽しんで頂きたい、思い出に残る一杯になってほしい、価格以上の体験を提供したいという気持ちから、味わい、演出、接客、グラス、テクスチャーなど、少しの驚き(サプライズ)を加えることを意識しています。
とはいえ、カクテルで大切なのはバランスですよね。「おもしろい」、「印象に残る」だけでなく、お客さまに「またオーダーしたい」、「またお店に来たい」と思っていただけるよう、アルコール感、甘味、酸味のバランスに優れた味わいを常に心がけています。
これからのバーシーンを盛り上げるために必要なものはなんだと思いますか?
ユニークなネーミングやコンセプト、ビジュアルを発信できるSNSのおかげもあり、これまでバーに足を運ばなかった若年層に、バーに興味をもって頂けていると感じております。
さまざまなきっかけでバーの魅力を知って頂けることは、いちバーテンダーとして嬉しい限りです。
とはいえ、古くから通っていただいているお客さまのためにも、スタンダードなバーの価値観も大切にしたいと思っています。
コロナ禍を経て、多くの人が自分なりの価値観に照らし合わせものごとを取捨選択するようになりました。
同様に、バーでも継承するものと新たに挑戦するもののバランスをとっていくことが大切だと感じています。
左:20代にして蒸留所も設立しようとしている伊藤さん。右:映画館にいるような気分が楽しめる、あそび心いっぱいの「ポップコーンカクテル」。
わずか23歳で自らのバーを構えた、「Cocktail Bar Raven」伊藤さんのストーリー。
つづいて2人目は、小岩の「Cocktail Bar Raven」のオーナーバーテンダー伊藤広光さん。
オーストラリア・メルボルンのホテルに勤務後、日本のレストランやホテルバーを経て23歳で自らのバーを構えたという伊藤さんのストーリーは?
バーテンダーになったきっかけはなんですか?
高校生の時、結婚式場でアルバイトをしていました。誰かが幸せになるプロセスのお手伝いをできることがうれしくて、サービス業に興味をもつように。
高校卒業後、ホテル専門学校へ進み、さらにメルボルンに留学。
食の勉強と並行してワインも学び、次第にお酒の世界に惹かれるようになりました。
その後、メルボルンのホテルバー勤務を経て、日本の複数のレストランやホテルバーで研鑽を積みました。
バーテンダーとレストランサービスで迷ったこともありましたが、お酒がもつ「人と人を繋ぐ力」に魅了され、この道へ進むことを決意しました。
現代におけるバーの役割はなんだと思われますか?
バーには“小さな楽しみ”が溢れています。新しい人やお酒との出会いは日常を彩り、私たちの人生を少しだけ前向きにしてくれると信じています。
とはいえ、社会や時代の変化を受けてバーの役割も変わっていきます。
想像するに、高度経済成長期におけるバーの役割は癒しだったのではないでしょうか。へとへとになるまで働いた後、自らへのご褒美として足を運ぶバー。そんなシーンが頭に浮かびます。
現代では働き方改革もあって生き方や働き方が大きく変わりました。
それを受けてバーの役割も疲れを癒す場から日常を彩る小さな楽しみを得る場へとシフトしているように感じます。
いうなれば、現代のバーとは“体験の場”、でしょうか。こういった需要の変化は、20代から支持されているバーが高いエンターテインメント性を有しているということからも伺えるように思います。
伊藤さんのオリジナルカクテル「バナナフォスター」。キャラメルソースとバナナの組み合わせがアメリカらしい同名のスイーツをカクテルに仕立てた。
「1杯のカクテルを通じて幅広い世界の魅力を届けていきたい」(伊藤さん)
これからのバーシーンをよりよくするためには何が大切だと思われますか?
バーはお酒を楽しむ場所であると同時に社交場でもあります。
家族でも友人でも仕事仲間でもない人と繋がれる、本名を名乗る必要もなく、自分ではない誰かになれる場所。
SNSの普及によりリアルな出会いや体験が減っているからこそ、匿名でもリアルに誰かと繋がれる場が貴重になっていくのではないでしょうか。
そのバーを守るために自分ができることは、より幅広い業界と繋がることかな、と考えています。
幅広い業界とつながり、いろいろな世界が混在する空間をつくることができたら、お酒を通して幅広い世界の魅力を伝えられるんじゃないかなと思っています。
2023年の伊藤さんのチャレンジはなんでしょう?
伊豆白浜で蒸留所をオープンする予定で、現在クラウドファンディングにも挑戦中。一つ一つのアクションが初めてで、わくわくしています。
自由度の高いお酒であることからリキュール免許の取得を目指していますが、これはバー開業前から掲げていた目標でもあります。
世界中でクラフトスピリッツやリキュールの造り手が生まれ、技術や自由度がどんどん増しています。だからこそ、もっと身近にお酒造りを感じて欲しいと思っています。
カクテルを頼む感覚で、バーカウンターでオーダーメイドのお酒を注文できる。そんな、いまよりもっとわくわくできる世界をバーから目指していきます。
15日に Bar Amberの岸田茉利奈さん、大阪からNiwaka barの川瀬颯太さんをご紹介します。