PICK UPピックアップ
どりぷらが注目する若手バーテンダー!Vol.4
2024年をリードするU30の4人
- 前編 -
#Pick up
Onodera Hiroaki/小野寺総章/Bar Soutsu、Yamamoto Ashu/山本亜周/深夜喫茶マンサルド
小岩のジン専門バー「Bar Soutsu」のオーナーバーテンダーの小野寺さん。自分で作ったマティーニをロックスタイルで飲みながら、大音量でアンビエントを聴いている時間が至福という小野寺さんは、趣味で作曲もしているそうで、「楽しいことがあればお酒を飲んで、ほろ酔い気分でピアノを弾き、曲を作ったりしています」。20代っぽくない趣味、いいですね!
未来のバーシーンを担う4人のバーテンダーをピックアップ。こだわりのカクテル、日ごろから心掛けていること、そして未来のバーシーンに必要なことなど、彼らのアイデンティティをご紹介します。
小野寺総章さん /「Bar Soutsu」
一人目は、小岩に自身のジン専門バー「Bar Soutsu」を構えて7年目にして、「ジンラボジャパン」も主宰する小野寺総章さん(28)。
はじめに、バーテンダーになった経緯を教えてください。
人見知りを克服したくてバーでアルバイトを始めたことがきっかけです。大学生のときでした。
当時はITやWEB系に進もうと思っていたのですが、お酒の勉強を始めたら、こちらの世界の虜になってしまって。
それからはとにかくいろいろなお店でアルバイトを経験しお酒のことはもちろん、経営、内装や動線などを勉強させてもらいました。
大学在学中でしたが、22歳のときにここをオープンしたんです。
カクテルメイキングにおいては、ジンの個性をいかに引きだすかを重視している。こちらは「塩とジントニック」。
店づくりで影響を受けたのは、亀戸の「The Cocktail Shop」です。お酒の銘柄を問わず値段が一律というスタイルに感銘を受けました。
当時は大学生だったこともあり、バーで勉強するにも「予算」という大きなハードルがありました。
好奇心の赴くまま、値段を気にせず好きなものをオーダーできるこのバーは、まるで夢の国のようだと思ったものです。
このスタイルに影響を受け、うちも全メニュー¥1500以下という設定しています。
20代で専門性の高いバーをオープンした小野寺さんが、店づくりで大切にしていることはなんですか?
世界各地、さまざまな国・地域で個性あるジンが造られています。
フレーバーを入り口にいろいろなジンを試していただきたいという考えから、あえてメニューを置かず、代わりにフレーバーチャートのお話をしています。
フローラル、ウッディ、スパイシー、ジュニパー感……まずは好みの方向性を探していただい、さらにそこを細分化して自分好みのフレーバーを見つけ出していただく。そんなお手伝いができればと思っています。
また、お客さまとのコミュニケーションも大切にしています。
ジンにはさまざまな造り手がおり、それぞれがユニークな背景を持っています。
お客さまの趣味やライフスタイル、好みの音楽をキーワードに、その方の嗜好に合いそうなジンをご提案しています。
ご来店いただくお客さまには同業者や料理関係、調香師など、香りに鼻の効く方が多く、僕も大いに勉強させてもらっています。
オープン当初は、東京のはずれで専門性の高いバーが受け入れられるかドキドキしていましたが、コミュニケーションが生まれやすいこのエリアで大成功でした。
写真左:東京・小岩の「Bar Soutsu」。写真右:大阪・梅田の「深夜喫茶マンサルド」。
小野寺さんのカクテルづくりのポイントはなんですか?
ネグローニやジントニックなどクラシックカクテルのツイストが多いのですが、うちのカクテルはジンが主役なので、そのジンの個性を引き出せるカクテルを心がけています。
また、それを飲んだ人の視野や世界が少しだけ広がったり、好奇心をくすぐられたり、そんなカクテルでありたいとも思っています。
ありがたいことに、ここをきっかけに他のバーにも出かけるようになったというお客さまも少なくないんです。
うち、もしくは僕のカクテルが、みなさんのバー体験がより豊かにするお手伝いができたらと思って、日々、勉強を続けています。
これから挑戦してみたいことはなんですか?
お店でやりたいことは、ジンのフレーバーチャートの充実です。
日本酒やビールでは比較的香りの研究が進んでいますが、ジンはまだまだと感じています。
ジンのフレーバーは香水なみに幅広く奥深いものなので、フレーバーチャートをきちんと整備して、ジンを知ってもらう手掛かりにしたいと思っています。
また、ドライなトニックウォーターの製造にも関われたらと思っています。
トニックウォーターって独特の苦味がいいのですが、甘さを嫌がる方も多いんです。
甘みを避けてソニックスタイルにすると、トニックウォーターにおける大事な要素である苦味が抑えられてしまう。それはあまりにもったいない。
海外にあるドライなトニックウォーターを手軽に使えるよう、製造に携われるといいですね。
Bar Soutsu
東京都江戸川区南小岩6-16-8
TEL:03-5876-8016
https://barsoutsu.com
山本亜周さん /「深夜喫茶マンサルド」
続いて二人目は、大阪の注目バー「深夜喫茶マンサルド」のオーナーバーテンダー、山本亜周さん(29)。
喫茶店でもありバーでもあるという不思議な業態の「マンサルド」、その人気の秘密に迫ります!
学生時代、週に一度、バーでアルバイトをしていたという山本さん。大学をやめて専門学校に入り、ウェブ制作のディレクター兼デザイナーとして仕事をしていたが、心機一転、自分の店を構えることに。「喫茶店のようなバーのような、僕の友だちが気軽に集まれる場所があったら楽しいな、という感じでした」。
「深夜喫茶」という業態がいまっぽくて素敵ですが、こういうスタイルのお店を始めたきっかけはなんですか?
僕自身、喫茶店が好きだからです。仕事前にふらりと立ち寄ったり、のんびり本を読んだり、友人とだらだらしゃべったり。昼夜を問わず色々な過ごし方をしています。
バーも好きですが、あまりお酒が強くないので、代わりに喫茶店を使う感じでしょうか。
だからうちは、飲みたい人はお酒を飲むし、お酒を飲まない人はコーヒーを飲む。お酒を飲まないことが正当化される場所がいいなと思っていました。
夜でもコーヒーのオーダーばっかり入る日もあるし、コーヒー1杯で数時間粘る方もいます。
客単価と回転率は死ぬほど悪いですが、僕としては好きに過ごしてもらえればいいと思っています。
「マンサルドといえばこれ!」というカクテルはなんですか?
喫茶店ということで大きなエスプレッソマシンを入れていますし、エスプレッソマティーニ、アイリッシュコーヒーなど、コーヒーカクテルのオーダーはとても多いです。
現在は、コーヒーを使ってもっとおもしろいカクテルを作れないかを研究中。メニューに載せていない、試作段階のカクテルはたくさんあるんですよ。
いずれにしろ、客層が若いこともあり、ハイコンテクストになりすぎないよう注意しています。
また、カクテルの知識がない方もいらっしゃるので、カクテルの文脈をわからずとも楽しめる味わい・香りを意識して提供しています。
最近は、干し柿や焼き芋など季節の食材を使ってカクテルを作っています。おいしいのはもちろん、ローアルコールかつ、ちゃんと素材の味を感じられることを大切にしています。
山本さんのカクテル、「苺とエスプレッソのクローバークラブ」は、ジンをベースにローズリキュールやストロベリーシロップを合わせた華やかな一杯。エスプレッソの苦味が余韻をキリリと引き締める。
こういう店をやっていることで同業の知り合いも増え、たとえば僕のメンターであり良き先輩でもある「Bar Nayuta」のヒロ(中山寛康)さんや「BAR識」の仲市(敬佑)さんといった存在のおかげで、クリエイティブなカクテルへの関心が高まりました。
バーでアルバイトをしていたころはクラシックカクテルしか知らなかったので、これがすごく新鮮で。
そういう意味では、「マンサルドといえば」というカクテルを探っている段階です。
手数というんでしょうか、引き出しを増やすことで徐々にその人らしさが立ち表れてくると思うので、自分の引き出しを増やしながらあれこれ試行錯誤しています。
自分の引き出しを増やし、自分らしいカクテルを作るために心掛けていることはありますか?
引き出しを増やす、新しいなにかをインプットするために「何かこれをやろう」というルーティンは特にありません。
強いて言うなら、できるだけストレスなく過ごし、心身ともに元気に店に立つことでしょうか。
目の前のカクテルを、どうおいしくするか。ここにいるお客さんを、どう楽しませるか。いつも100%の体調・気力で「マンサルド」に来てくれたお客さんの相手をしたいと思っているから。
これが、僕にできる最上のことだと思うんです。
ここに全力で向き合うことを続けていったら、その先になにか素敵な未来があるのかもしれません。
深夜喫茶マンサルド
大阪府大阪市北区中崎西1-7-11 東側
Instagram : mansarde_coffee