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野沢温泉蒸留所:豪雪地帯で目指す、
唯一無二のジャパニーズウイスキー。
- 前編 -
#Pick up
Yoneda Isamu/ヨネダ イサム from「野沢温泉蒸留所」
スコットランドと日本にルーツをもつサムさん。ここに来る前は茨城県の蒸留所で酒造りを行っていた。ドイツ・CARL社のポットスチルの前で。
豪雪地帯の村には、おいしい水の循環があった。
今年、スキー場開場100年を迎える野沢温泉村は、豊富な積雪量と上質なパウダースノーを誇り、人口わずか3500人ほどの村ながら、近年はウィンターリゾートとして外国人ツーリストに人気を博している。
この村に拠点を構え、2022年10月に正式に稼働をスタートした蒸留所が「野沢温泉蒸留所」だ。
開業して1年足らずで、国際的な酒類品評会「The San Francisco World Spirits Competition 2023」のジン部門にて、リリースしたクラフトジンすべてが金賞を受賞。
またロンドンで開催された権威ある品評会「ワールド・ジン・アワード2024」では「 ロンドン・ドライ・ジン」部門の金賞とベスト・イン・カントリー賞を受賞するなど、そのものづくりに注目が集まっている。
なぜ野沢温泉村だったのか?
古い缶詰工場をリノベして生まれた蒸留所。
「ぼくが初めてこの村に来たのは2021年10月でした。グリーンシーズンの終わりでしたが、村のどこにいても水の流れる音が聞こえ、『土地が生きている!』と感じたことを覚えています。
村を取り巻くブナ林の山々や自然がとにかく美しくて、その風景は母国・スコットランドの森や川を思わせました」
長い冬の間に降り積もった雪はやがて雪解け水となり、50年をかけて地中を巡り村から湧き出る。
「蒸留酒造りにおいてもっとも重要な要素は水である」と教わってきたサムさんは、その水を一口飲んで、「これで蒸留酒を作ったらおいしいものができる!」と確信したとか。
そのままここで蒸留責任者として働くことを決め、2ヶ月後には引っ越してきた。
そこから蒸留施設を整え、ジンのレシピ開発を始め……その1年後にオープンしたというから凄まじい。
地元の職人たちの尽力で完成した貯蔵スペースには熟成樽がずらり。バーボン樽を中心に、長野県内のワイナリーから譲ってもらったワインカスクなど。いずれは年間300樽にまで生産量を広げる予定だ。
ホールマッシュもOK!あらゆる穀物に対応できる設備
「施設については、ここのファウンダーたちがすでにドイツのCARL社にポットスチルを発注していました。
さまざまな穀物に対応できるフレキシブルな設備を作ろうとしていたんですね。
日本のウイスキー蒸留所のほとんどがローラーミルとマッシュタンを採用していますが、他とは違うものづくりにチャレンジしたいという思いから、この設備を最大限に利用できるシステムをぼくなりに考えてみました」
“ニューワールドウイスキー”のカテゴリーにおける一般的な設備や考え方から一度離れ、全く違うアプローチで蒸留を見直してみたら、大胆でおもしろいウイスキーが造れるのでは--というのがサムさんの考えだった。
そこで導入したのがハンマーミルと、日本で初導入となるマッシュフィルターだ。
写真左:主にグレーンウイスキーで使われるハンマーミル。写真右上:麦汁を採取するマッシュフィルター。写真右下:フィルターで濾過することで、よりクリアな麦汁を多く採取することができる。
ハンマーミルとマッシュフィルターを使うことで、大麦以外の穀物を使ったウイスキー、つまりコーンなどのグレーンやライウイスキー造りも可能になる。
たとえば野沢温泉村のソバや小麦や米など、日本らしい穀物を使ってみたら……?というわけで、「野沢温泉蒸留所」ではモルトウイスキー以外にも、スモールバッチのグレーンウイスキーの蒸留も計画している。
ウイスキーの製造は始まったばかりだけれど、たくさんのチャレンジを思い描いているよう。
さらに、この蒸留所のもう一つの特徴は、インターナショナルなチームにある。
「蒸留所を立ち上げたのはオーストラリア人と日本人からなる6名のチーム。
蒸留は日本とスコットランドにルーツを持つぼくや日本人の蒸留家が行い、蒸留設備はドイツやアメリカのものを採用しています。
このように多彩なバックグラウンドを持つメンバーを、野沢温泉村という土地の気候や風土、自然、素材がまとめ上げているんですね」
蒸留所内のショップスペースからボトリングの様子を見学できる。
こうした環境で目指すのは、「野沢温泉村以外では味わえないような、大胆で鮮烈な世界レベルのウイスキー」だ。
開業前にはさまざまな蒸留所へ足を運んだ。日本各地に点在する蒸留所とその造り手たちの個性や熱意に触れ、あらためてジャパニーズウイスキーの盛り上がりを肌で実感した。
「だからこそ、エリアの特徴を備えたウイスキーが出てくることを期待しているし、自分たちがそうしたムーブメントの盛り上がりに貢献できればうれしい」とサムさん。
「ハイランド、スペイサイド、キャンベルタウン……と、生産エリアごとに特徴を備えるスコッチのように、北信&新潟、九州、北海道とエリア性が確立されていくと、未来のジャパニーズウイスキーはもっと盛り上がるはず。そういうシーンを期待しています」
後編では話題のクラフトジンについて、サムさんにボタニカルの特徴などを伺いました。
後編に続く。
SHOP INFORMATION
野沢温泉蒸留所 | |
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長野県下高井郡野沢温泉村豊郷9394 TEL:0269-67-0270 URL:https://nozawaonsendistillery.jp/en |