挽きたて・点てたてをかなえるマシン
「Cuzen Matcha」が抹茶カクテルを変える!
– 前編 –

PICK UPピックアップ

挽きたて・点てたてをかなえるマシン
「Cuzen Matcha」が抹茶カクテルを変える!
– 前編 –

#Pick up

塚田英次郎/Tsukada Eijiro by「World Matcha 」

今月は、抹茶ブームに沸くアメリカの外食シーンで注目を集める抹茶マシンをご紹介。茶葉を挽いて抹茶を点てることができる「Cuzen Matcha」って何?

文:Ryoko Kuraishi

こちらが”抹茶版エスプレッソマシン”の「Cuzen Matcha」(スターターキット¥39,600)。持ち運びもできるコンパクトなサイズ、本格的な抹茶を楽しめる。水以外のドリンクにも対応しているので、ウォッカやジンといったスピリッツで抹茶を点てられるのがうれしい。色は他にマットブラックがある。購入はオンラインからどうぞ。

アメリカで抹茶ドリンクのマーケットを切り拓く。

なんでも、アメリカの高級緑茶市場は、2028年までに261億ドルに達すると予測されているそうな。

海外でもすっかり市民権を獲得した抹茶ドリンクだが、簡単・手軽に抹茶を点てられるという抹茶マシンがある。

「Cuzen Matcha(クウゼン・マッチャ)」は、豆を挽いてエスプレッソを抽出するエスプレッソマシンのように、ボタンひとつで茶葉(碾茶)を挽いて抹茶を点てることができるというマシン。

2020年秋にアメリカで先行発売されると、世界三大デザイン賞のひとつ、「iF Design Award 2021」や『TIME』誌が選ぶ「Best Innovations of 2020」など、数々の有名アワードを受賞。

コロナ禍を経た現在、カリフォルニアやワシントンDC、ニューヨークといった大都市のカフェやレストラン、バーが注目し始めているらしい。

World Matchaのファウンダーの2人。右が塚田さん、左はお茶の一大産地・福岡県八女出身の八田大樹さん。

このマシンがユニークなのは、茶葉を挽いてパウダーに仕立て、抹茶を点てられるところ。つまり、フレッシュな挽きたてをまるごと味わえる。

抹茶というとパウダー状のものが一般的だが、挽きおきすると酸化しやすく、香りや色合いにダメージが生じてしまうのだ。

マシンの使い方は3ステップ。
1マシンの茶筒部分に茶葉を、専用カップに水を入れる。
2茶葉の濃さを3段階から選択。
3スタートボタンを押す。

これだけで、120秒後には挽きたて・点てたての抹茶を楽しめる、というわけ。

マシンを開発したのは、サントリーで長く清涼飲料水や茶飲料の開発に携わった塚田英次郎さん。

「DAKARA」「Gokuri」などを生み出した後、アメリカで茶事業の立ち上げを担当。

帰国後、国内で「烏龍茶」や「伊右衛門」のブランドマネジメントや「特茶」の開発を手がけ、これをきっかけにお茶にハマった。

サンフランシスコの「RITUAL COFFEE ROASTERS」でのポップアップの様子。

「本来、お茶というのは、茶葉の状態や濃さ、湯温や抽出時間、湯呑みによって幅広い味わいを楽しめる飲み物です。

ワインと同様、味わいのレンジが広いんです。

お茶ならではのフレッシュな旨みや香り、鮮やかな色合いを楽しむなら、淹れたてに勝るものはありません。とくに抹茶は熱に弱く、その傾向が顕著です。

お茶の味わいを知るにつれ、シンプルにおいしいお茶を届けたいと考えるようになりました。

前職では、ペットボトル飲料という枠内でいかにお茶らしさを表現できるかを考えていましたが、一度、ペットボトルから離れてお茶にアプローチしてみようと思ったんです」

ちょうどそのころ(2015年ごろ)、健康志向の高まりを受けたアメリカでは、カフェインの過剰摂取を気にする人たちがコーヒーに代わる飲み物として緑茶、特に抹茶に注目するようになっていた。

実際、ニューヨークなど大都市を中心に、お茶を扱うカフェが登場。ピンク×グリーンといった、SNS映えを意識したブランディングがZ世代に受けていたようだ。

そこに可能性を感じ、サントリーの新規事業としてサンフランシスコで抹茶専門カフェ「STONEMILL MATCHA」を立ち上げた。

このカフェの成功により、アメリカの巨大コーヒー市場に食い込める手応えを感じたそう。

海外の導入店舗から。こちらはハワイの「DEAN&DELUCA」。

「同時に、コーヒーとの決定的な違いも感じました。それは、『家庭で飲めない』ことです。

抹茶のパウダーが売っていても、茶筅なんて誰も持っていないし、そもそもどう点てるのかわからない。だから店でオーダーする以外の選択肢がない。

つまり、パウダーのままでは広がりはないんです。

ならば、誰もが簡単に、家で抹茶を立てられる“抹茶エスプレッソマシン”を開発しようと考えました」

2019年にサントリーから独立し、アメリカでWorld Matcha Inc.を立ち上げて「Cuzen Matcha」の開発に着手した。

翌1月、世界最大の家電見本市「CES」に「Cuzen Matcha」を出展すると、なんとイノベーティブな製品に贈られる「CES2020 Innovation Awards Honoree」を受賞!

「Cuzen Matcha」をお披露目したのは、毎年、ラスベガスで開催される世界規模の家電見本市「家電見本市「CES」。多くのテック企業から導入に関する問い合わせを受けた。

消費者と茶農家をつなげ、お茶産業を守る。

「Cuzen Matcha」が高く評価された点は、
1ミルを内蔵。だから挽きたての味、香り、色合いを表現できる。
2マシン専用の茶葉が用意されている。
3プロが立てたような抹茶を、家庭で手軽に楽しめる。

実は「専用の茶葉」というのがポイント。というのも、家庭にあるのは抹茶ではなく煎茶であることがほとんどだから。

煎茶を挽いて点てたところで、苦味が強いし色合いもイマイチ。抹茶に比べると茶葉に含まれる水分量が多く、ミルのメンテナンスに手間を要する。

「また、茶葉をまるごと摂取すると考えると、味わいがよいだけでなく安心・安全であることも大切だと考えました。

そこで無農薬・無化学肥料・国産の良質な抹茶を、責任をもって提供するところまでをサービスに含めることにしました。

適正な価格で茶葉の調達を行うことは、高品質な茶葉を生産する茶農家や茶畑を守り、お茶作りの伝統や文化を受け継ぐことにつながります。

『Cuzen Matcha』を使うことで、消費者も生産者も幸せになれるビジネスを志しました」

後編では、実際に「Cuzen Matcha」を導入しているバーからのフィードバックをお伝えするとともに、カクテルメイキングにさらにフィットしそうな業務用マシンについてもご紹介します。


後編に続く。

SHOP INFORMATION

World Matcha
東京都目黒区東山 3-1-19 メゾン池尻大橋 607号室
URL:https://cuzenmatcha.com/ja-jp

SPECIAL FEATURE特別取材