PICK UPピックアップ
ザッツ・エンターテインメント!
楽しいテキーラのススメ。
<前編>
#Pick up
林生馬さん by「日本テキーラ協会」
映画「ライジング・サン」のキャスト&スタッフと。主演のショーン・コネリーや共演のウェズリー・スナイプスの姿も。
テキーラといえば、何をイメージするだろうか?
塩とライム、ショットガンの一気飲みに
夜遊びスポットのド定番、ザ・チャンプスの大ヒットチューンはその名も「テキーラ」!
若かりしころのローリングストーンズのメンバーが、ツアー中に飲みまくったのはテキーラ・サンライズだった。
日本では、暴力沙汰絡みのありがたくない報道で脚光を浴びてしまったが、
それがテキーラである。
テキーラ協会会長の林生馬さんは、日本ではいまだ認知度の低いテキーラを広めるべく、日夜奔走している。
先日の報道にさぞや落胆しているだろうと思ったら
「逆にいろいろなメディアに取材に来てもらえました。
『丁寧に作られたいい酒なんだ』と主張できたので、まあ、結果オーライでしょう」
とあくまで前向きだ。
2009年、日本テキーラ協会を立ち上げた林さんがテキーラと出会ったのは今から二十年近く前、アメリカ西海岸でのこと。
小さなころから映像の魅力に取り憑かれていた彼は高校卒業後、本格的に映画製作を学ぶべくLAの大学へ進学する。
大学卒業後プロとして初めて参加した映画製作の現場は、フィリップ・カウフマン監督、ショーン・コネリー主演の大作『ライジング・サン』(’93年公開)だった。
本場ハリウッドの製作現場で、日本人は大学を卒業したばかりの林青年ただ一人。
クランク・アップ後の打ち上げでは、孤軍奮闘した彼をねぎらってくれたのだろう、主役のショーン・コネリー自らが杯をすすめてくれたという。
林さんの個人コレクションをご馳走になった。左は樽熟成した「ドン・フリオ」、右は「テキーラス・デル・セニョーロ」。噂のレゼルヴァ・デ・ラ・ファミリア(ファミリー・リザーヴ)である。
「ショーン・コネリーが勧めてくれた酒、それが人生初のテキーラでした。
親戚にも下戸は多いし、私もお酒は決して強いほうではありません。
テキーラなんて飲んだらきっと死ぬ!と思いましたが、ショーン・コネリーが勧めてくれているんだし、
『死んでもいいや!』という気持ちでいただきました」
ぐっとグラスを空けた林さん、そのクリアでいて爽やかな飲み口、飲んだ後の陽気な高揚感に衝撃を受ける。
「おまけに飲酒につきものだった頭痛や二日酔いとは無縁で、翌朝にはすーっと酒が抜けている。
こんなにおいしい、楽しい酒があったのか!と」
そのテキーラのボトルにあった『100%アガヴェ』の表示を頼りに、林さんのテキーラ探求の旅が始まった。
そもそもテキーラとは、メキシコはハリスコ州テキーラ地方(グアダラハ市近郊)で作られている地酒を指す。
アロエに似たリュウゼツラン(英名:ブルー・アガヴェ)を原料とする蒸留酒で、シャンパーニュ地方のシャンパンやコニャック地方のコニャック同様、
AOC(原産地呼称)が認められている。
つまりテキーラ地方で作られなければ、「テキーラ」とは呼べないのだ。
それほどに土壌や気候、作り手のワザ、伝統……つまりテロワールが重視されている。
ちなみにテキーラには100%アガヴェ(100%de Agave)とミックス(Mixto)の二種があるが、
今回話題にするのは、林さんを魅了した純アガヴェ酒、100%アガヴェのほうである。
日本で流通されているテキーラの多くはミックスだが、世界的には100%アガヴェが主流になっている。
テキーラ・バルティーダのスタッフとテキーラの熟成樽の前で。このラテンなノリ、なるほどテキーラです。
「メキシコには大昔(西暦200年頃)から、プルケというリュウゼツランの搾り汁を原料とした醸造酒があります。
とろりと白濁したプルケは見た目も味わいも甘酒そっくりなのですが、
そのプルケをさらに蒸留したものがメスカルという酒になります。
メスカルの中で一定の条件をクリアしたものだけが、晴れて『テキーラ』を名乗れるのです」
林さんが映画製作に携わっていたちょうどそのころ、LAを中心に北米ではプレミアム・テキーラの一大ブームが興っていた。
100%アガヴェにこだわった高級銘柄が続々誕生、一本数十万円はくだらないような逸品も少なくなく、
テキーラは俄然、「セレブリティの酒」として認知されるようになる。
「件のショーン・コネリーはもちろん、
ダン・エイクロイドやサミー・ヘイガなど個性的な俳優、ミュージシャンにテキーラ通は多いですね。
愛飲家として知られるロバート・デ・ニーロが、LAの高級寿司屋で寿司をつまみながらテキーラを飲んでいる姿を目撃したこともあります」
労働者が一気飲みする安酒から、ハリウッドを彩るきらびやかな高級酒への華麗なる変遷。
メキシカン・カルチャー色濃いLAでブームの到来を実感した林さんもまた、
テキーラの魅力にはまっていく。
こちらが林さんの㊙テイスティングノート。
当時、林さんはビザの関係で年に一度、国外へ出国せねばならなかった。
通常なら日本へ帰国するところを、彼は本場メキシコの、グアダラハに点在する蒸留所を訪ねてまわるようになる。
「今までに60カ所強、1000銘柄をテイスティングしました」
現在も続ける蒸留所巡りで、林さんが欠かさずつけているテイスティングノートがこれ(写真参照)。
蒸留所ごと、銘柄別に香りや味わいなどが詳細に綴られている。
どの蒸留所でも味はどんどん変化するゆえ、3年も遡るとテイスティングノートとしては役に立たなくなるそうだが、
蒸留所を巡った旅の記憶はいつまでもここにとどまっている。
「蒸留所の経営者が家族のために特別に熟成した、秘蔵のファミリー・リザーブ(レゼルヴァ・デ・ラ・ファミリア)をご馳走になったり、
作り手であるスタッフと杯を酌み交わしたり、
家族経営の小さな蒸留所が多いので、テキーラの作り手と親交を深めるとまた違った楽しみが見いだせます」
テキーラ同様メスカルもまた、スマートな変貌を遂げている。メキシコや北米ではヒップなメスカル・バーが続々誕生、若者に大人気のスポットとなっているとか。左はワイン樽で熟成させたメスカル。右は林さんの運命の銘柄、ショーン・コネリーが愛飲する「チナーコ」。
そんな林さんに最も好きなテキーラを1銘柄、挙げてもらう。
「一つですか……」
迷いに迷った林さんがようやく選んだのがこちら、ショーン・コネリーが教えてくれた〈チナーコ〉だ。
「とても一つには絞れませんから、好きというより思い入れの強い銘柄ということで。
テキーラ開眼のきっかけとなった思い出深い1本で、
北米で生まれたテキーラ・ブーム、その始まりから盛り上がっていく様を文字通り、肌で感じることができた。
このテキーラのおかげで貴重な体験をさせてもらいました」
後編へつづく。
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