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天鏡蒸溜所:亡き創業者の思いを継いで。
会津の地にウイスキー蒸留所が誕生。
– 前編 –
#Pick up
Onuma Takashi/大沼孝 by「天鏡蒸溜所」
福島県を代表する磐梯山(標高1816m)。
福島県の会津地方といえば、良質な水と米に恵まれた、東北屈指の酒どころとして知られる。
そんな会津地方に、エリア初となるウイスキー蒸留所がオープンした。
“会津富士”とも呼ばれる磐梯山麓の、磐梯西山麓湧水群の近くに位置する蒸留所は、その名も「天鏡蒸溜所」という。
天鏡とは李白の詩の一説にある言葉で、大正天皇が猪苗代湖を鏡に例えて「天鏡」と呼んだそうだ。
スコットランドの蒸留所で本場のウイスキー造りに魅せられた小池駿介さん。
若き創業者が描いた夢は、「日本と世界をつなぐジャパニーズウイスキーを!」
「天鏡蒸溜所」の設立は、県内でスーパーマーケットを展開する「リオン・ドールコーポレーション」が新事業として2018年から取り組んできたものだ。
蒸留所を立ち上げたのは、同社取締役の小池駿介さん。
小池さんはイギリス留学時代にスコッチウイスキーに魅せられ、帰国後、家業であるスーパーマーケット事業に取り組む傍ら、ウイスキー事業を計画。
父で同社代表の小池信介さんも、その構想に共感したことから2018年に天鏡株式会社を設立。
小池さんは本場・スコットランドの製法を学ぶため、ともにウイスキーを研究する親友とともに59箇所の蒸留所を巡ったほか、トマーティンでは1ヶ月程度の研修を何度も重ねたとか。
「天鏡蒸溜所」創業者として精力的に動いていた小池さんだが、2022年1月に知床沖で起きた遊覧船事故に巻き込まれ、28歳の若さで夭逝。
その遺志を継ぐべく、事業立ち上げの段階からこれに携わる大沼孝さんを中心とするチームや、スコットランドの技術者、専門家の友人らが力を合わせ、県内では2例目となるウイスキー免許の取得にこぎつけた。
「榮川酒造」のホトリング工場の一角に誕生した蒸留所。
運営に携わる大沼さんによれば、「天鏡蒸溜所」のポイントは以下の3点だ。
ひとつは、土地の利。仕込み水に使われるのは、日本名水100選に選ばれている龍ヶ沢湧水。
70年前の雪解け水が湧き出している超軟水で、硬度は23。後から分かったことだが、これはスペイサイドの水とまったく同じ硬度だとか。
2つめは、小池さんが自ら図面を引いた、本場を凌駕する内容の蒸留施設。
4種類の酒質を造り分けられる設備になっており、求める味わいに応じてブレンドを変えることで付加価値を高めることができる。
さらに酒質に関しては、地元の老舗酒蔵「榮川酒造」と連携することで、発酵のプロフェッショナルである彼らの知見や経験、テイスティングの勘どころを生かせることになった。
仕込み水に使うのは、地元の名水・龍ヶ沢湧水。
3つめは、徹底的にシングルモルトにこだわる「天鏡」と、創業者がスコットランドで仕入れた複数の原酒を、58種189樽で熟成させる“ファウンダーズリザーブの「風(仮称)」”という、個性の異なる2ラインの展開があること。
「天鏡蒸溜所としては、今後、2つの製品を展開していく予定です。
今年から製造を開始するシングルモルト『天鏡』は長期熟成を掲げ、2034年には10年熟成させた商品の出荷も予定しています。
もう一つの『風』は、創業者がスコットランドで仕入れた複数の原酒を樽熟成にかけるブレンデッドウイスキー。
これは2020年から熟成を始めており、今年秋ごろに順次発売する予定。
創業者が買い付けた189樽を使っていますが、『風』の熟成で樽のポテンシャルを探りながらそのフィードバックを『天鏡』に生かしていきます」(大沼さん)
ファウンダーズリザーブの「風(仮称)」はこの秋発売予定。左は2.5年、右は1.5年熟成させたもの。
58種の樽で仕込んだ原酒のブレンドというと気が遠くなりそうだが……。
「チーフブレンダーは杜氏の免許をもっており、味わいに関する繊細な感性やそのコントロール力は頭抜けています。
今秋リリースする『風』はスコットランドの風をイメージし、濃厚で骨太なブレンドになりましたが、将来的にはより軽やかな『風』をリリースするかもしれません。
58種の樽と日本酒造りで磨き上げたスキルを駆使して、さまざまな『風』を生み出そうと考えています」
後編では、今年発売する「風」を中心に、さらに「天鏡蒸溜所」のウイスキーについて深掘りしていきます。
後編につづく。
SHOP INFORMATION
天鏡蒸溜所 | |
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969-3302 福島県耶麻郡磐梯町大字更科字中曽根平6841-11 TEL:0242-73-2300 URL:https://www.tenkyo.jp |