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焼酎は“日本のテキーラ”?!
HIGH ROAD SPIRITSのマーケ術。
– 後編 –
#Pick up
林ゆの/HAYASHI YUNO, エリック・スワンソン/Eric Swanson by「HIGH ROAD SPIRITS」
LAのバー「Wolf and Crane」で行った即売会での様子。アメリカでしか買えない「イチローズ・モルト モルトアンドグレイン111度」(オレンジのボックス)はわずか15分で完売した。 トップ画像は、HIGH ROAD傘下のTokiwa Importsが手がけたリミテッドエディション、マルスウイスキーの「 BAKEMONO 」。
訪日観光客がジャパニーズ・スピリッツのファンになった。
アメリカ人は自宅でスピリッツを飲む習慣がある。コロナ禍をきっかけにホームバーを充実させる消費者も増え、ECサイトでは高価なウイスキーやジンが売れるようになった。
現在はインフレの影響で再びホームドリンカーが増えているそうで、いまや家飲みはすっかり日常に根付いたといえるだろう。
加えて、ジャパニーズ・スピリッツの追い風となっているのが日本ブームだ。
訪日アメリカ人観光客は204万人超(2023年)、コロナ禍前を上回る増加を見せているが、実際に日本を訪れたアメリカ人がジャパニーズ・スピリッツのファンになっている。
「たとえば、『季の美』はいまやアメリカで人気のジンですが、取り扱い始めた当初は誰も見向きもしませんでした。
『季の美』はアメリカでの小売価格が70ドルほど、対してジンの平均価格は15〜25ドル。『ちょっと試してみよう』という気にならない値段です。
ところがアメリカで日本ブームが起きて、訪日したアメリカ人が日本で『季の美』のファンになり、帰国後も飲みたいと思うようになった。
それで問い合わせが急増しました」(林さん)
「BCB」でふるまわれた「だいやめ」。華やかな香りは女性にも人気!
焼酎は“日本のテキーラ”?
そんなジャパニーズ・スピリッツのなかで、彼らが注目しているものはなんだろうか?
アメリカで受けるプロダクトのキーワードとして、エリックさんは“地方色”、“ヘリテージ”、“ハンドメイド”というキーワードを上げてくれた。
このキーワードに当てはまるスピリッツが、焼酎と泡盛なんだそう。
「アメリカ人は地方色豊かでクラフト感があるテキーラやメスカルが大好きです。
アメリカで支持される理由は、AOC(原産地統制呼称制度)、ヘリテージ、クラフトといったものへの共感があるから。
工場で大量に生産されるテキーラに比べ、ハンドメイドが多いメスカルはストーリーもユニークで、そういうところも好奇心をくすぐるのでしょう。
この傾向を日本のプロダクトに置き換えて考えてみると、まさに焼酎や泡盛が当てはまるんです」(エリックさん)
そこで、テキーラのプロモーションと同様のやりかたで焼酎を売り出してみることにした。
優れたフレーバーをもち、ユニークなストーリーがあって小規模かつニッチなものづくりをしている造り手なら、「高価格でも確実に売れる」とエリックさん。
「逆に、こちらで売れるためのポイントは安売りしないことだと思います。それだけ手間がかかっているものなんですから、自信をもってそれに見合った価格をつける。
その分、日本らしいギークな部分がばっちり現れていることが大切です」
NYの「Martiny's」にて、渡邊琢磨さんが作ってくれた「だいやめ」のマティーニ。
焼酎&泡盛を世界のスピリッツに。
長く扱ってきたものの、売り上げに関しては苦戦していたという焼酎。
けれども、焼酎を取り巻くシーンが一変するかもしれない。そんな手応えを感じさせてくれたのが、「だいやめ」(濵田酒造)だ。
「SG SHOCHU」の取り扱いをきっかけに、新たにラインナップに加わえた「だいやめ」は、甘くまろやか、ライチのような香りが特徴で、アメリカ人も素直に飲める味わい。
渡邊琢磨さんがオーナーを務めるニューヨーク「Martiny's」にて、「だいやめ」でマティーニを作るイベントを開催したところ、多くのニューヨーカーがだいやめマティーニに飛びついた。
「スピリッツにしてはアルコール度数が控えめで、ジンよりも手頃。アロマ系焼酎の『だいやめ』ならアメリカのマーケットでも受け入れられるのではないか、そんな風に考えています」(林さん)
アメリカ向けの商品は、ラベルのデザインもジャポネスク&ノスタルジックに。
焼酎のプロモーションでターゲットにしているのは、やっぱり訪日外国人だ。
日本のZ世代が焼酎や泡盛にもっと注目してくれればと願うものの、日本人の人口は限られているし、アルコール離れが進んでいる。
であれば、日本人だけをターゲットにするよりも、年間3000万人を超える外国人をターゲットにする方が、インパクトがありそうだ。
「外国人をターゲットとする場合、彼らの心に刺さるのは『日本で発売されている』『日本人に認められている』というストーリーです。
あるいは、元永(達也)さんの『SCARLET』や山﨑さんの『THE JAPANESE BITTERS』、(後閑)慎吾さんの『SG SHOCHU』のように、日本らしい材料を使っていたり、日本ならではの味わいだったり。
そういうプロダクトはストーリーをアピールしやすいですし、実際に多くの人が興味を持っています」(林さん)
前編に続き、今年の「BCB」の様子から。左は「SCARLET」の元永達也さん、右は「季の美」アンバサダーの佐久間雅志さん。
そんな二人に、いま、興味を持っている日本のプロダクトを尋ねてみた。
「いいと思うものはたくさんあります。鹿児島のAKAYANEの山椒スピリッツ、新潟の越後薬草の野草スピリッツ、沖縄の泡盛。
おもしろいものはたくさんあります。
日本の造り手のみなさんには、ぜひ日本のトラディショナルを貫いてほしいと思います。
それが世界の市場では価値になるのですから」(エリックさん)
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