テキーラ×ビジネスの
オイシイ関係を考える。<後編>

PICK UPピックアップ

テキーラ×ビジネスの
オイシイ関係を考える。<後編>

#Pick up

池田浩之さん、友田時雄さん、坂本太郎さん by「SHoT3(ショットスリー)」

前編に引き続き、プレミアム・テキーラ輸入販売会社SHoT3の立ち上げメンバーによるテキーラ座談会の模様をお届け。ビジネスの「プロ」が新たな視点でテキーラ・ビジネスに斬り込む。

文:Ryoko Kuraishi

2004年に設立されたファナカトラン蒸留所。

新テキーラの気になる評判。

どりぷら
発売から約1カ月が経ちましたが新しいプレミアム・テキーラ「カーサ デ ルナ」の評判はいかがですか?


池田
思った以上に好評です。
テキーラ・ソムリエには「他と違う」「キャラが立っている」と言ってもらえましたし、試飲してもらったらホテルオークラのバーにも置いてもらえることになりました。
その他田中屋さん、武蔵屋さん、信濃屋さんで扱ってもらっていますし、名古屋や大阪でスピリッツを扱う酒屋さんからも先日、連絡をいただきました。


友田
ブランコはテキーラらしいキレとハーブのような爽やかな香りが楽しめます。
人気のレポサドはコスパもいいですね。
4カ月熟成した分、ブランコよりも甘みが増していますがしっかりとテキーラのうま味も味わって頂けます。
特筆すべきは甘みと香りの絶妙なバランス。
アネホはインパクトが強くて味わい深い。
テキーラ経験の少ない人にもおすすめです。
実際、テキーラ初心者に「これがテキーラ?!」と驚かれました。

正式な発売を前に、テキーラ協会で試飲会を行った。多数のテキーラ・ソムリエが参加してくれたそう。

飲食店に蒸留所...構想は大きく。

どりぷら
前回もお話のなかに「地道に営業を」というフレーズが頻出していたのですが、「カーサ デ ルナ」をこんな風に広めていきたという具体的なプランを教えてください。


池田
私たちは新規参入ですから販路もないし、とにかくこつこつと店を回って試飲してもらうしかない。
「こういうバーに置いてほしい」とか「こういう店なら相性が良さそう」というブランディングより、今はまず、多くの人に接点をもってもらいたい。


そのためにはとにかく試飲をしてもらって、広げられるだけ広げようと考えています。
先日、とあるバーに営業にいったら「テキーラの営業に来られたのは初めてだよ」と笑われましたが(笑)。


あとはせっかくメキシコという国の産物と接点を持ったのだから、メキシコとの関係をより強くしていきたいですね。
個人的には「テキーラだけでいいのか?」という気持ちも多少、持ちつつ。


あとは、いざ営業をしてみて難しいなと感じるのは「拡大性」。
手堅いビジネスではあるが、「増やす」しかないんですね。


そのとき、扱うブランドを増やすのか、あるいは店を持つとか酒以外の切り口を増やすのか。
横に拡大するか縦に拡大するか、そのあたりの判断が難しそうです。


友田
さっきもお話したように、私は児童の労働問題に関心を持っているので、現在は売り上げの何%かを現地の団体に寄付するシステムをとっています。


ただ、最終的には寄付するだけではなく、現地の雇用をサポートできるようなビジネスモデルを作るのが目標です。
たとえば自分たちで蒸留所を立ち上げるとか。
「日本発のテキーラ」なんてものを作ってみても面白そうです。

10月には恵比寿で「カーサ デ ルナ」のリリースパーティが開催された。来場者のために、「カーサ デ ルナ」を使ったスペシャルカクテルも登場した。

坂本
飲食店の展開も考えますね。
メキシコ料理店というのは鉄板ですが、その他にもたとえば、もし和食にも合うテキーラを見つけたらテキーラの飲める和風割烹とか。


テキーラは塩分を一切含まないので、基本的に塩気のある食事とは合うんですね。
ということは、日本酒が合う料理はテキーラも合うのかも…と考えますよね。
そうすると和食とのコラボレーションもまんざら夢ではない。


友田
プランとは違いますが、自分たちが「ニッチ」であることを常に意識しながら動いていきたいですね。
やっぱりテキーラ・ソムリエとかプレミアム・テキーラの世界ってまだまだ特殊ですから。
テキーラを知らない・飲んだことがないという人の視点を、常に持っていないと。


池田
そうですね。
愛飲家の方は飲み方にはかなりこだわりをお持ちです。
でもプレミアム・テキーラを飲んだことのない大多数の方のために、飲み方やスタイルは常に柔軟に提案していきたいと思っています。
「これ!」という決めつけはもったいないかな、と。


坂本
テキーラという酒自体はものすごくメジャーで、好き嫌いはあれど認知されている。
そして認知されている以上、「カーサ デ ルナ」には、罰ゲームとか一気飲みという従来のイメージを覆せる力が十二分にあると思っていますから。


池田
サントリーの創業者、鳥井信治郎さんは、周囲に大反対されたウイスキーを個人的な飲食の席に持参して、とにかくその場のみんなに飲ませていたと言います。
そうやって少しずつ周囲に認知させていったんですね。
そういう地道なスタイルに共感します。


坂本
マーケティングの法則に従えば、現状はターゲットもぼやけているし、ブランディングもせず全方位的に力を注いでいます。
マーケティングのセオリーからは外れているかもしれないけれど、そうやって日々、地道に広めていく中で戦略って見えてくると思うんです。


あとは、たとえばサントリーは自前で製造し販売しますよね。
そのほうがコストダウンになりますから。
そういう意味で、自分たちの蒸留所立ち上げの構想も持っています。
が、現段階ではまず、「カーサ デ ルナ」を地道に売っていくことですね。

パーティ会場では女性テキーラ・ソムリエが「カーサ デ ルナ」のプロモーション・ガール、その名も「ルナガール」に扮してゲストにテキーラを振る舞ってくれた。ブランコ、レポサド、アネホのイメージカラーに沿った衣装も注目の的!

日本のマーケットに合わせた提案を。

池田
実は近々、テキーラ管理委員会の認証も受ける予定です。
まずは目先のことに集中しつつ、将来の(蒸留所立ち上げ)構想のために体制を整えていきますよ。


どりぷら
それでは皆さんの今後の目標を教えてください。


友田
地道に広めていく、と言いながら(笑)テキーラ以外のものにも興味を持っています。
会社コンセプトである「トレジャー・ザ・タイム(Treasure The Time)」に合うものですね。
そのためにはまず実際にメキシコに足を運んでみたい。


現役の学生なので年末までは修士論文に追われていますが、それが終わったらみんなでメキシコの蒸留所巡りをしようか、なんて話も出ています。
現段階では「カーサ デ ルナ」ですが、次の商材もある程度目星をつけておかないと。


池田
そうそう、クリス・アンダーソンの『MAKERS—21世紀の産業革命が始まる』(NHK出版)を読んで3Dプリンタの可能性に思い至りました。
カスタム製造とDIYによる製品デザインを武器にすれば、たとえばオリジナルのショットグラスとプレミアム・テキーラをセットで販売するとか、ラベルのデザインを複数用意してボトルのデザインに幅を持たせることも可能です。


友田
ボトル・デザインも、テキーラに興味を持ってもらうためのこだわりポイントですからね。


坂本
「ジャケ買い」ならぬ「ラベル買い」をする愛好家の方も多いんですが、ボトル・デザインにこだわった銘柄なら品質にもこだわっている場合が多いのは事実です。


池田
その他にもリミテッド・エディションとか限定ボトル、あるいはハーフボトルなど日本のマーケットに合わせたプランをいろいろ提案してみたいですね。
とにかく普通の輸入業者とは異なる視点で物事を切り取っていきたい。

「カーサ デ ルナ」、左からアネホ¥6,980、ブランコ¥2,980、レポサド¥3,980。ホームページのほか武蔵屋のサイト(http://www.musashiya-net.co.jp/)でも購入可能。売り上げの一部はメキシコの感染症の治療や予防を行う団体「Casa Alianza」に寄付される。

坂本
私はテキーラを知ったことで、ものすごく世界が広がったという実感があります。
とにかく酒にまつわる引き出しを増やしたいという一心で先日、ラム・コンシェルジュも取得したんです。


ラムも歴史のある酒ですから、ここからテキーラにフィードバックできることもすごく多いんですね。
そしてその過程で日本に知られていないラムやテキーラの極上銘柄を知るにつけ、世界で埋もれているおいしい酒を発掘してみたい、と興味をそそられます。


コンセプトの「トレジャー・ザ・タイム」には自由と冒険心にあふれた時間を大切にしようという気持ちが込められています。
プレミアム・テキーラに限らず、そういう時間にぴったりのツールを常に探求していきたいですね。


友田
全く日本で知られていない酒を、まず飲み方から提案する。
そういうゼロからのスタートも面白そうですよね。


池田
起業するのは簡単です、誰でもできます。
でもプレミアム・テキーラという商材でどう戦っていくかがビジネスですよね。
そう考えると自分たちはまだスタートにも立っていない、準備段階にいるんですね。
だからスピード感を持って動いていきたい。


しきたりの多い業界だとは思うんですが、新規参入の自分たちは右も左もわかりませんから(笑)しきたりではなく情熱で、テキーラと一般の人々の接点を増やしています。


まずは「カーサ デ ルナ」を日本一のプレミアム・テキーラに。
各々がそれぞれのプランを持っているんですが、後のことは修士論文が終わってからすりあわせるということで......。


どりぷら
飲食業界の慣習を超えた活動を見せてくれそうなSHoT3。


メキシコの児童就労問題からウェブのイノベーションをリアルに持ち込むデジタル産業革命の話まで、ビジネスマンらしい着眼点とピュアなテキーラ愛が縦横無尽に交錯する、興味深い座談会でした。
どりぷらとしても彼らの今後の動きに注目していきたいと思っています。

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