
PICK UPピックアップ
焼酎界の新星「SS.L」と考えた、
世界のバーシーンで求められる焼酎とは?
<後編>
#Pick up
Hombo Naoya/本坊直也 from「薩摩酒造」
文:Ryoko Kuraishi
8月に発売されたばかりの第5弾「SS.L_05」は、枕崎の素材をふんだんに使ったジン!
キーボタニカルは枕崎産の紅茶!
「SS.L」から満を持して発売された「SS.L _05」は、地元をテーマに考案されたジンだ。
メインボタニカル素材として採用されたのは、枕崎産の紅茶「べにふうき」と地元産のタンカンとレモンの皮。
「べにふうき」はそれぞれ渋みや酸味、甘味のことなる一番茶、二番茶、三番茶をブレンドし、浸漬法とバスケット法を併用する。
レモンは、SDGsの観点から、果汁を搾った後の皮だけを地元で調達した。
ジンを構成する基本的なボタニカルからは、ジュニパーベリー、コリアンダーシード、アンジェリカルート、リコリスをチョイスした。
パッケージは思いっきりモダンなのに、製造の現場には昔ながらの焼酎蔵の趣が漂う。このギャップが日本のモノづくりらしくて素敵。
世界が求めるジャパニーズ・スピリッツってなんだ?
本坊さんは、「The SG Shochuプロジェクト」をきっかけにバー文化に親しみ、東京出張のたびにさまざまなバーに足を運ぶようになった。
そんな背景から生まれたジン、「05」。コロナ禍もあってまだ実現していないが、「SS.L」を東京のバーに持ち込み、カクテルのベーススピリッツとしての可能性について、バーテンダーたちからフィードバックを得たいと考えている。
今後もバーテンダーの意見をモノづくりに生かしていきたいそうだ。
「SS.L_04」はカカオ焼酎。厳選したトリニダード・トバゴ産のカカオの粉末を、100年以上受け継がれるかめ壺で発酵させた二次もろみに加える。
バーテンダーに興味をもってもらえる酒造り
これからの酒造り、焼酎造りはどこに向かうのか。ジャパニーズスピリッツといえばジャパニーズウイスキーに注目が集まるこの時代、焼酎の造り手として何を意識しているのか。
「焼酎に必要なものとして、まずは『付加価値の創出』を考えています。
今後はお酒市場も、リーズナブルに楽しめる日々のお酒と、ハレの機会のためのお酒というように、二極化していくと思います。
私たちが『SS.L』で目指すのはハレのほう。
市場には4号瓶で1万円の焼酎って出回っていないですよね?なぜ焼酎ではそれがないのか、どうすればその価値をもたせることができるのか。
ジャパニーズウイスキーは発売後、数秒で売り切れるのに、焼酎はどうしてそうならないのか、そういう意識が必要だと感じています。
原酒で勝負できるクオリティのモノづくりにこだわりつつ、付加価値をどう創出するのか、作り手側は伝え方や提案の方法をブラッシュアップしなければいけない。
そうした価値を拡張していくプロセス上にある存在が、バーなのだと思います」
「SS.L_02」の原料、燻した後のサツマイモ。あえて原酒のまま、ブレンドも加水もせずにボトリングすることで、個性的でインパクトのある味わいが楽しめる。
「特に海外で勝負するためには、バーを見据えた幅広いマーケットへの提案が欠かせませんが、焼酎の魅力を海外にアピールするために必要な存在が、日本のトップバーテンダーです。
日本のバーテンダーに、焼酎に興味をもってもらい、アンバサダーとして世界に発信してもらうことがいちばん重要だと考えています。
そのためにはたくさんのバーテンダーとコミュニケーションを重ねて、バーテンダーがどういうお酒を求めているのかを私たち自身が学ばなければいけません」
加えてエシカルという新しい価値観を取り入れる必要がある、と本坊さん。そういう背景をもったプロダクトには多くの人が新しさを感じ、興味をもってくれるはずだからだ。
業界の常識を覆す芋醸造酒は、よく冷やして、エレガントなワイングラスでいただきたい。カクテルに応用もできそうだ。
「とはいえ、PR戦略としてSDGsを謳うのではなく、モノづくりの本質にエシカルが深く根ざしていることが必要です。
そもそも薩摩酒造では、製造過程で排出される何万トンという焼酎カスやイモクズを、燃料や飼料、肥料に再利用する取り組みを、何十年も前から行なっています。
そういう取り組みをますますアップデートしていこうと考えているところです」
今後は、バーへのアプローチを深めるとともに、世界のマーケットを見据えて食前酒や食後酒に求められる酒質、ペアリングに必要なもの、食事と酒との関係性についてさらに理解を深めていきたいという。
「SS.L」から始まりそうな、ジャパニーズスピリッツの新潮流。焼酎のブレイクにご期待ください!
SHOP INFORMATION
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薩摩酒造 | |
鹿児島県枕崎市立神本町26番地 TEL:0120-4673-17 URL:https://shop.satsuma.co.jp |