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ボタニカルはアートになる!
「越後薬草蒸留所」が目指す上越らしいスピリッツ。
<後編>
#Pick up
Tsukada Kazushi/塚田和志 from「株式会社 越後薬草」
文:Ryoko Kuraishi
蒸留所の2階に設けられた、開放型のギャラリースペース。ポットスチルの傍で、発酵や植物をテーマにしたアート作品を展示する。
発酵や蒸留は、生きたアート
「越後薬草蒸留所」が面白いのは、異業種から参入した造り手ゆえ、酒に対する固定概念がなく、新しい視点が貫かれているところだ。
たとえば、蒸留所内に「アート」を取り入れたところ。
しかも、ただアートギャラリーを併設するのではなく、蒸留のプロセスや完成したプロダクトをアートのひとつとして感じてもらおう……という趣向だ。
「発酵や蒸留は、人間が制御できない領域だと考えています。
現代の技術や知見をもってしても、微生物を完全にコントロールすることはできません。
だからこそ風土や地域性が大切になってくるのですが、人の仕事に自然が手を入れて完成するという意味では、アート作品を作り上げるのと同じ感覚ではないでしょうか」(代表の塚田和志さん)
そこで、工業製品を手掛けるファクトリーではなく、ギャラリーのようなスペースでアート作品を作りあげるようにスピリッツを手がけていく場を目指したそう。
80種の野草が織りなす発酵やその後の蒸留プロセスは、アートそのもの、と塚田さん。
野草酵素飲料&食品ともに健康をテーマに開発したものであることから、蒸留所自体も自然環境に配慮した循環型とした。
野草酵素の発酵過程で生じるアルコールを回収してジンを造るだけでなく、廃棄物などのロスを無くす試みにも取り組んでいる。
ジンやスピリッツに使用した野草やハーブなどの植物原材料は、農業用肥料へ加工され、その肥料を使用した畑でハーブ類を生産する。
このハーブで酵素飲料やジン、スピリッツを製造する……というサイクルである。
「クラフトジン」に加えて「アート」、「循環」、「建築」、「発酵文化」というキーワードを掲げたことで、これまでお酒に興味がなかった、ジンやスピリッツを飲んだことがない、そもそもジンってなに?というビギナー層までも開拓できているとか。
日本の蒸留酒が一堂に会す「ジャパニーズフェス2022」出展時の様子。
カルチャーの文脈で、バーに縁のなかった人を惹きつける
「私自身、ジンについては門外漢でしたが、世界各地のジンのボトルをぱっと見たときに、『ジャケットがおしゃれだな、こんなジャケットの飲み物ならぜひ味わってみたい』、そう思ったこともあり、ボトルのデザインにはとりわけ心を配りました。
とくにボタニカル、アロマ、発酵という言葉は女性に刺さりやすい傾向がありますから、ボトルデザインもやわらかで繊細なタッチに仕上げています」
女性を意識したのはデザインだけではない。ジンに使うボタニカルの選定においても女性の視点を意識したという。
たとえば「THE HERBALIST YASO GIN」と「THE HERBALIST YASO SPIRITS」のキーボタニカルである「ハーブの女王」ことよもぎは、女性の悩みに効果があると言われる和のハーブで、昔から民間薬として使われてきた。
成分だけでなくその香りにも、女性ホルモンのバランスの乱れによるイライラや不安を解消する効果があるということがわかっている。
左は定番の「THE HERBALIST YASO GIN」¥6,380。右はノンアルコールの「YASO ボタニカルシロップ BUTTERFLY PEA」¥2,700。バタフライピーの清涼感のある色合いそのままに、ミントを効かせた。
「THE HERBALIST YASO」のラインナップは大きく2つに分かれる。
定番の「THE HERBALIST YASO GIN」と「YASO SPIRITS」は、よもぎほか80種の野草やハーブが織りなすハーモニーを楽しめる。
一方、月替わりで発売する限定商品は「THE HERBALIST YASO GIN」をベースに、その月にフォーカスする単体のボタニカルのアロマを加えたもの。
アロマを全面に打ち出している点が特徴で、たとえば2月にはカカオ、夏にはジントニックにすると液色が青からピンクへ変化するバタフライピー、12月はひんやりと爽やかなモミの木、というように、その季節ならではのボタニカルのアロマを味わうという趣向だ。
「THE HERBALIST YASO GIN」のおすすめの飲み方はジントニック。「嫌いな人はいないであろう定番のカクテルで、”森に実る架空のフルーツ”をコンセプトにした『THE HERBALIST YASO GIN』のみずみずしい香りを楽しんでください」(塚田さん)。
地域に愛されるスピリッツ
蒸留所ツアーには女性のグループや20代など、蒸留酒を知らない、バーに足を運んだことがないという層が多く参加しているという。
こうしたターゲットに向けて発信を行い、蒸留所内でジンを味わってもらうことで、上越市にジントニック文化を根付かせることが塚田さんの目指すものだ。
「蒸留所では地域の事業者や生産者をまきこみ、定期的にマルシェを開き、ペアリングサロンやサウナイベントなども開催して、地元のみなさんにもジンに馴染んでもらいたいと考えています。
また、地元のバーともコラボしてSNSや動画でカクテルレシピを発信しています。
このように、野草を使ったジンを中心に幅広いコンテンツで地域デザインを行い、上越市を発酵の町として活性化していくこと。大人はもちろん、子供連れの家族も蒸留所に遊びにきて、お酒だけでない楽しみ方で上越らしさを味わってもらうこと。
それが『越後薬草蒸留所』が上越で成し遂げたいことです」
SHOP INFORMATION
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株式会社 越後薬草 | |
新潟県上越市小猿屋73番地 TEL:025-544-3050 URL:https://yaso80gin.jp |