PICK UPピックアップ
ローカルのバーが面白い!
地元農家と手を組む、伊勢「BAR ALLEY」。
<前編>
#Pick up
Hata Taishu/畑太周 by「BAR ALLEY」
Photos by Shoki Sakamoto
地方発信のバーが面白い!
ここ数年、海外や東京の新店同様、地方のバーに注目が集まるようになった。
確かに目まぐるしく移り変わる都市部のバーシーンは刺激的だ。けれど、都市部のバーに負けないくらいユニークなコンセプトを掲げた、オリジナリティのあるバーが地方に増えてきたのだ。
海外や東京で修行した後にUターン、Iターンを果たしたバーテンダー。
食材をきっかけに農業に興味を持つようになり、昼は畑、夜はバーという二足のわらじを楽しむバーテンダーもいる。
今回ご紹介する、三重県伊勢市にある「BAR ALLEY」のオーナーバーテンダー、畑太周さんも農業に魅せられた一人。
三重県の、人口約500人 の小さな村で生まれ、伊勢市で育った畑さんが本格的にバーテンダーのキャリアをスタートさせたのは22歳のとき。
それまでは「BAR ALLEY」の系列店であるクラブ&ライブハウスで、イベントの企画や運営を行いながら、平日はバーカウンターに立ち、見様見真似でカクテルを作っていた。
そんな中、地元で20年続いていたオーセンティックバー、「BAR ALLEY」を居抜きで譲り受けることに。
地元の酒蔵、元坂酒造の「八兵衛 暁」と「SG焼酎」に、ニホンハッカ、山椒など和のハーブをあわせた「ニホンハッカの和モヒート」¥1,300。甘みはフレッシュなステビアでつけている。
「『BAR ALLEY』常連客もたくさんついている人気店でしたが、前オーナーバーテンダーが身体を悪くしてクローズすることになったのです。
お酒を作るのは好きでしたが、そもそも僕はオーセンティックバーに行ったことがなかったから、そこからカクテルを猛勉強しました。
常連客のみなさんに育てていただきながら、なんとか営業していました」
当時の常連客は年齢層も高め。熟練のバーテンダーから22歳の若者にバトンタッチしたということで、常連客の反応も応援と批判が入り混じっていた。
そんな畑さんが新生「BAR ALLEY」で心がけたのは、自分と同年代の20代にオーセンティックバーを知ってもらうこと。
そもそもオーセンティックバーが圧倒的に少ないのでバーでカクテルを飲むという文化が若者には根付いていなかった。
そこで友人やイベントで培った人脈を駆使し、彼らにカクテルを体験してもらったのだ。
そうして1年後には、自分と同年代のゲストでカウンターが埋まるようになっていた。
今月から「火の帆」ジンのアンバサダーを務めることに。
ミクソロジーとの出合い
地元では、「BAR ALLEYといえばフレッシュフルーツのカクテル」と周知されているが、始めは「オーセンティックバーならクラシックでしょ!」ということで、クラシックカクテルのみを提供していた。
ミクソロジーに出合ったのは、カクテルの勉強をしに出かけていたシンガポールで。
「シンガポールのバーの雰囲気が好きでたくさんのバーに通いました。
そこで出合ったのがミクソロジー。
カクテルの味わいはもちろん、バーテンダーが楽しそうにカクテルメイキングをする様や、ゲストがまったくかしこまらず、まるでライブのオーディエンスのように楽しんでいる様子に共感しました。
自分も楽しくカクテルを作り、ゲストにもライブ感を楽しんでもらいたい。
そういう店を作りたいと思いました」
ハーブ園で収穫したばかりのケンタッキーカーネルミント、スイートバジル、シオザキソウ。
地元農産物の魅力をカクテルで伝える
なぜミクソロジーか。伊勢市というと観光地のイメージがあるかもしれないが、実は農作物が豊かに実る生産地。
とりわけ伊勢産メロンとイチゴが有名だ。
大規模農園ではなく、こだわって少量多品目を栽培する農家が多く、数が少ないゆえに地元でしか流通していない品種も多い。
「それなのに、地元のおいしいものを知らない人が多いんです。
採れたてのフルーツの味わい、香りはすばらしく、それで作ったカクテルだって都市部のカクテルには負けない味わい。
自分たちの地元にはこんなすごい農作物があり、生産者がいて、地元で育てられたフルーツが本格的なカクテルになるんだということをもっと多くの人に広めたい。
それがやがては伊勢のバーシーンを活性化することになると思いました」
イチゴを栽培する農家と。
「BAR ALLEY」ならではのミクソロジーカクテルを生み出すべく、バーテンディングの勉強に加えて食材の勉強もスタート。
野菜とフルーツアドバイサーの資格を取得、近隣にある農家のもとを訪ね、ハーブやフルーツ、土壌のことを学んだ。
3年前からは地元の農家のハウスの一角を借りて季節ごとのハーブを栽培している。
「自分で育てると、より本質に触れられるような気がします。
営業前は店からクルマで5分ほどの畑で作業をし、その日の収穫をして店に行きます。
まだまだ理想には程遠いですが、年々よくなっていますよ」
現在、バーテンダーとしての興味の対象はクラシックカクテルに回帰しているというが、そこにも自家栽培のハーブを使うことで「BAR ALLEY」らしさを貫いている。
後編ではさらに、地方だからできること、地方に広がる様々な可能性を伺ってみよう。
後編に続く。
SHOP INFORMATION
BAR ALLEY | |
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三重県伊勢市大世2-4-20 アミビル3F TEL:0596-27-1300 URL:http://www.bar-alley.com |